Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器・その他

(S547)

腸閉塞を伴ったS状結腸子宮内膜症の1例

A case of endometriosis of the sigmoid colon associated with ileus

小島 祐毅, 説田 政樹, 佐藤 幸恵, 前岡 悦子, 岡田 好美, 山田 雄一郎, 清水 由貴, 有吉 彩, 山岸 宏江, 湯浅 典博

Yuki KOJIMA, Masaki SETTA, Yukie SATO, Etsuko MAEOKA, Yoshimi OKADA, Yuichiro YAMADA, Yuki SHIMIZU, Aya ARIYOSHI, Hiroe YAMAGISHI, Norihiro YUASA

名古屋第一赤十字病院検査部

Department of Clinical Laboratory, Japanese Red Cross Nagoya Daiichi Hospital

キーワード :

【はじめに】
子宮内膜症は子宮内膜組織が異所性に増殖する非腫瘍性疾患で,内性/外性に分類される.腸管子宮内膜症は外性子宮内膜症の約10%を占める比較的稀な疾患である.今回我々は,腸管子宮内膜症により腸閉塞を発症し鑑別診断に難渋した1例を経験したので報告する.
【症例】
44歳女性
【既往歴】
子宮内掻爬術,不妊治療中
【現病歴】
2012年5月,腹部膨満感と軽度の腹痛を主訴に当院を受診した.腹部単純X線写真で二ボー像を認めたため,イレウスが疑われて入院した.
【腹部造影CT所見】
小腸から下行結腸までの腸管は拡張し,S状結腸に腸管径の狭小化を認めた.下部消化管内視鏡による経肛門的イレウス管留置は困難であったため,横行結腸に人工肛門が造設された.入院9日目,精査のため人工肛門から下部消化管内視鏡検査が施行された.
【下部消化管内視鏡所見】
S状結腸粘膜は保たれていたがやや発赤し,全周性に狭窄を認めた.生検では異型上皮を認めなかった.注腸造影ではS状結腸に長さ3cmの境界明瞭な狭窄を認め大腸癌が疑われた.
【腹部超音波所見】
超音波検査ではS状結腸に限局性の壁肥厚を認め,ここに第4層(固有筋層)と連続する低エコー腫瘤を認め,粘膜下腫瘍が疑われた.ソナゾイドによる造影超音波検査を行ったところ,S状結腸の腫瘤は血管相では腫瘤の辺縁から索状に造影されるが,腫瘤自体のvascularityは乏しく,連続する固有筋層と同様の造影所見であった.腫瘤に圧排される粘膜固有層や漿膜下層は早期からよく造影され,腫瘤との境界はより明瞭となり,腫瘤部の粘膜面は保たれていることが示唆された.大腸癌あるいは粘膜下腫瘍が疑われ,入院15日目,S状結腸切除術が施行された.
【切除標本肉眼所見】
切除されたS状結腸に,粘膜ひだが屈曲蛇行する4×2cmの限局性腫瘤を認めた.粘膜面は保たれていた.
【病理組織所見】
肥厚した固有筋層内に異型のない内膜腺を認め腸管子宮内膜症と診断された.粘膜表層上皮は保たれていた.
【考察】
腸管子宮内膜症は下腹部痛,血便,イレウスなどが主訴となることが多く,症状が月経時に一致して周期的に出現するのが特徴である.発生部位はS状結腸・直腸に多いが,粘膜下病変であるため生検による診断が難しく,術前に正しく診断されることは少ない.自験例では超音波検査で腫瘤と固有筋層に連続性があり,造影によって粘膜下腫瘍の特徴が明瞭となった.鑑別診断としてはGIST,転移性大腸癌,悪性リンパ腫,びまん浸潤型大腸癌などが挙げられる.
【結語】
腸閉塞を伴ったS状結腸子宮内膜症の1例を経験した.腸管子宮内膜症の診断は困難なことがあるが,粘膜下腫瘍の鑑別診断の1つとして考慮するべきである.