桑木 健志^{1, 2}, 中村 進一郎^{1, 2}, 竹内 康人¹, 萩原 宏明¹, 安中 哲也¹, 大西 秀樹^{1, 3}, 池田 房雄^{1, 3}, 能祖 一裕^{1, 3}, 山本 和秀¹

Kenji KUWAKI^{1, 2}, Shinichiro NAKAMURA^{1, 2}, Yasuto TAKEUCHI¹, Hiroaki HAGIHARA¹, Tetsuya YASUNAKA¹, Hideki ONISHI^{1, 3}, Fusao IKEDA^{1, 3}, Kazuhiro NOUSO^{1, 3}, Kazuhide YAMAMOTO¹

¹岡山大学病院消化器内科, ²岡山大学病院超音波診断センター, ³岡山大学大学院医歯薬学総合研究科分子肝臓病学

¹Department of gastrointestinal medicine, Okayama University Hospital, ²Ultrasound Diagnostic Center, Okayama University Hospital, ³Department of Molecular Hepatology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences

キーワード :

【背景】
東芝社の開発したASQ（Acoustic Structure Quantification）は超音波診断の重要所見の一つである画像の粗さを解析する方法であり，物理的作用を加え組織の弾性を計測するFibroscan，VTTQ等とは異なる．同社の最新機種であるAplio500は従来機と比較し空間分解能，コントラスト分解能が向上し，特に高周波探触子での画像が改善されている．ASQと肝線維化との関連性についてはAplio XGと3MHz探触子を用いた既報があるが，Aplio500と6MHz探触子を組み合わせた報告はなされていない．
【目的】
ウイルス性慢性肝炎の肝線維化診断におけるASQの有用性と，ASQにおける6MHz探触子の有用性を検討する．
【対象】
2012年3月以降に当院で肝生検を行ったウイルス性慢性肝炎症例のうち，生検前にASQを測定した連続症例26例（B型慢性肝炎4例，C型慢性肝炎22例）．
【方法】
超音波診断装置はAplio500，探触子はPVT-375BT（中心3.5MHz，以降375BTと表記）およびPVT-674BT（中心5.2MHz，以降674BTと表記）を用いた．生検部位の肝実質超音波断面像を両探触子でASQ-modeで記録し，取得したRAW dataをPC用ソフトPC-ASQRv1.01R002を用い解析した．375BTではdepthを8cm，focusを4cm，ROIをdepth 5cmの位置で大きな脈管を避け幅3cm以上となるよう設定，674BTではdepthを5cm，focusを3cm，ROIをdepth 4cmの位置で幅2.5cm以上となるよう設定した．得られた2種類のASQ値の平均値とSDを求めた．生検組織の線維化のステージを新犬山分類で評価し，F値と2種類のASQ値との関係を調べた．
【結果】
F0（n=3），F1（n=17），F2（n=4），F3（n=2）における375BTで得られたASQ値（Cm2％，mean±SD）はそれぞれ118.0±3.3，112.2±3.3，115.8±2.9，121.0±4.0，674BTで得られたASQ値（Cm2％）はそれぞれ111.3±3.3，110.4±1.4，118.5±2.8，115.0±4.0であった．ASQ値とF値の関係へ直線を当てはめた場合のF値1あたりのASQ値の上がり幅の推定値は375BTで1.6±1.6（p=0.34），674BTで2.8±1.6（p= 0.08）であった．2種類のASQ値には相関（r=0.52）を認めた．674BTのASQ値は375BTのASQ値と比べ変動幅が小さく，またSDも有意に小さかった（p＜0.001）．
【結論】
肝線維化のステージと得られたASQ値とは相関がみられ，3MHz探触子のASQ値より6MHz探触子のASQ値のほうがよりその傾向が強かった．6MHz探触子のASQ値は3MHz探触子のASQ値と相関し，3MHz探触子の値よりも変動幅は小さく安定していた．