Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:脾臓

(S542)

Real-time Tissue Elastographyによる脾臓の硬さ評価と門脈圧との関連についての検討

Real-time Tissue Elastography reveals relationship between splenic elasticity and portal hypertention

森 雅美1, 福田 勝彦2, 中尾 由佳1, 井西 千晶1, 鳥居 裕太1, 楠本 有希1

Masami MORI1, Katsuhiko FUKUDA2, Yuka NAKAO1, Chiaki INISHI1, Yuta TORII1, Yuki KUSUMOTO1

1PL病院中央臨床検査部, 2PL病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, PL Genaral Hospital, 2Department of Gastrointestinal Medicine, PL General Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々は第85回学術集会において,Real-time Tissue Elastography (RTE) を用いて慢性肝疾患における脾臓の硬さの臨床的意義について検討し,脾腫の有無にかかわらず食道静脈瘤(EV)+群は−群に比し有意に脾臓が硬い傾向を示すことを報告した.EV 形成が門脈圧亢進と関連することはよく知られているが,門脈圧亢進と脾臓の硬さについての報告は少ない.そこで今回,我々は脾臓の硬さと門脈圧との関連をEV+群とEV−群で比較検討したので報告する.
【対象および方法】
上腹部消化管内視鏡にて食道静脈瘤の有無を確認できた慢性肝疾患33例(C型慢性肝炎10例,C型肝硬変9例,原発性胆汁性肝硬変5例,B型慢性肝炎1例,B型肝硬変2例,アルコール性肝硬変4例,原因不明の肝硬変2例)を対象とした.使用装置は日立アロカEUB-8500でリニアプローブ(3〜7MHz)を使用した.走査方法は,肋間走査において脾臓を描出し皮下脂肪層,筋層と脾実質が約1:1になるようにROIを設定しプローブの圧迫によってRTE画像を描出し相対的ひずみ分布を観察した.得られたRTE画像を日立アロカ社提供の画像解析ソフトを用いてひずみ平均値(Mean),硬く描出された領域の面積(Area)の各特徴量を算出した.EV(+)群16例,EV(−)群17例の2群間で各特徴量と脾門部脾静脈径,脾静脈血流量(脾門部における脾静脈断面積および平均血流速度より算出)について比較検討した.
【結果】
各特徴量と脾静脈径との間にはMean(r=−0.48),Area(r=0.38)と良好な相関関係が見られた.脾血流量においてはMeanが(r=−0.36)であったが,Areaは(r=0.27)であり弱いながらも相関関係を認めた.しかしEV(+)群と(−)群において有意差(P>0.05)は見られなかった.
【考察】
今回,我々が検討した結果では,過去の報告で門脈圧と関連するとされる脾静脈径,脾血流量と各特徴量の間に弱いながらも相関関係が見られたことから,門脈圧の亢進と脾実質の硬さが関連していることが示唆された.慢性肝疾患における脾実質の硬さの意義については未だ不明な点も多く,今後も検討を加え究明していきたいと考えている.