鈴木 康秋¹, 杉山 祥晃¹, 佐藤 龍¹, 齊藤 なお², 松本 靖司², 平間 斉枝², 坂本 千賀子², 平沼 法義²

Yasuaki SUZUKI¹, Yoshiaki SUGIYAMA¹, Ryu SATOU¹, Nao SAITOU², Yasushi MATSUMOTO², Tokie HIRAMA², Tikako SAKAMOTO², Noriyoshi HIRANUMA²

¹名寄市立総合病院消化器内科, ²名寄市立総合病院臨床検査科

¹Gastroenterology, Nayoro City Genaral Hospital, ²Clinical laboratory, Nayoro City Genaral Hospital

キーワード :

【症例1】
70歳代，男性．16年前にC型慢性肝炎に対してインターフェロン療法を施行，SVRとなり，以後年1回肝癌スクリーニングの画像検査を受けていた．今回，腹部CTにて多発脾腫瘍を指摘され精査となった．血液生化学検査では，AST, ALTは正常，HCV抗体陽性だが，HCV-RNAは陰性．AFP, PIVKA-II, CEA, CA19-9は正常で，可溶性IL2-Rも378 U/mlと正常であった．腹部造影CTでは，脾臓に7, 15, 18mmの計3個の乏血性腫瘍を認め，MRIでは，脾実質よりT1WIでややlow，T2WIでややhigh，DWIでややhighを呈し，dynamic造影では，動脈相でリング染影を呈した．腹部超音波では，B modeでlow or iso echo，造影超音波の後血管相で3個とも完全欠損像として同定され，defect re-injection testにて内部に網の目状の細かな血管像が描出された．全身CTでは脾臓以外に異常を認めなかった．以上より，脾原発悪性リンパ腫と診断し，脾摘術を施行．病理所見では，Diffuse large B-cell lymphomaの組織診断となった．
【症例2】
30歳代，女性（妊娠15週）．10ヶ月前に前医で施行したスクリーニング腹部超音波にて径11mmの脾嚢胞を指摘された．妊娠15Wになり左季肋部痛が出現し受診となった．血液生化学検査では，AST, ALTは正常，HCV抗体は陰性．AFPは妊娠のため軽度高値だが，PIVKA-II, CEA, CA19-9は正常で，可溶性IL2-Rは1158 U/mlと軽度高値であった．妊娠前期であり，造影CTは不可であり超音波を施行．B modeで境界明瞭な55mmの内部不均一low echo，造影超音波の後血管相では完全欠損像を呈し，defect re-injection testにて内部に網の目状の細かな血管像が描出された．以上より，脾原発悪性リンパ腫と診断し，脾摘術を施行．病理所見では，Diffuse large B-cell lymphomaの組織診断となった．
【考察】
脾原発の悪性リンパ腫はまれであり，全悪性リンパ腫の約1％程度と報告されている．造影CTでは造影効果のない低吸収域を呈し，他の脾腫瘍と鑑別困難な例が多いが，造影超音波の後血管相における完全欠損像と，re-injection testにおける網の目状の細かな内部血管像が有用と考えられた．