Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:胆のうⅠ

(S540)

超音波内視鏡にて術前診断が困難であったBilIN-3を合併した黄色肉芽腫性胆嚢炎の1例

A case of xanthogranulomatous cholecystitis with difficult preoperative diagnosed BilIN-3 by endoscopic ultrasonography

久保 敦司, 石田 悦嗣, 吉田 司, 清輔 良江, 松枝 和宏, 山本 博

Atsushi KUBO, Etsuji ISHIDA, Tsukasa YOSHIDA, Yoshie KIYOSUKE, Kazuhiro MATSUEDA, Hiroshi YAMAMOTO

倉敷中央病院消化器内科

Gastroenterology, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
黄色肉芽腫性胆嚢炎(以下XGC)は胆嚢壁内に胆汁色素を含む組織球を主体とした肉芽腫を形成し壁肥厚をきたす比較的まれな胆嚢炎の一つである.本疾患は画像検査上,胆嚢癌との鑑別が困難であり,ときに診断や治療方法に苦慮することがある.今回術前検査にて胆嚢癌は否定的であったが,BilINの存在を切除標本で認めた一例を経験したので報告する.
【症例】
62歳男性
【主訴】
心窩部痛
【現病歴】
心窩部痛を認め,当院を受診.肝酵素上昇および胆嚢底部の腫瘤を指摘され,胆嚢癌が疑われたことから併発した総胆管結石の採石および精査目的に入院となった.
【入院後経過】
検査所見にて軽度の黄疸と胆道系優位の肝酵素上昇を認めた.腫瘍マーカーの上昇は認めなかった.造影CTでは胆嚢底部に腫瘤影を認め,胆嚢床と肝実質の境界が一部不明瞭であり,肝実質に腫瘤と連続するlow density areaを認めたが粘膜面の不整は認めなった.MRCPではHeavy T2にて胆嚢壁にRokitansky- Aschoff sinus (RAS)や嚢胞性結節を認め,XGCを強く疑う所見であったが,CTで指摘された腫瘤周辺の境界不明瞭な領域は再現性をもって認められた.EUS (Olympas UE260)では胆嚢底部の腫瘤にはRASと思われるlow echoic spaceを散在性に認め,腫瘤から連続するように胆嚢壁内に偏在性の平坦隆起を認めた.胆嚢頚部は胆石の影響で粘膜表面の評価は困難であった.ERCPではまず下部胆管の結石を截石した後に胆嚢造影を施行したところ,腫瘤部位の陰影欠損を認めたが胆嚢管および胆嚢頚部の造影は良好であった.ENGBDを留置して連続細胞診を施行したが,結果は全てclassⅠであった.術前検査ではXGCの可能性が高いと考えられたが,腫瘤から連続する平坦隆起の存在と腫瘤と肝の境界が不明瞭であることから胆嚢癌が完全に否定できず胆嚢摘出,肝床切除およびリンパ節郭清術となった.病理結果は胆嚢底部の腫瘤および連続する平坦隆起はHealing acute cholecystitis and chronic cholecystitisであり,XGCの確定診断となった.しかし頚部に異型の強い細胞を認め,核の大小不同や極性の乱れを認めたことからBilIN3が合併していた.
【考察】
XGCは昨今胆嚢癌と鑑別できるようであれば,胆嚢摘出術のみの縮小手術が勧められているが,本症例のように術前に指摘できないBilINの合併の可能性もあり,術式は慎重に検討されるべきと思われた.