Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:胆のうⅠ

(S540)

偽胆石症例の検討:超音波所見を中心に

Pseudolithiasis of gallbladder

小松田 智也1, 石田 秀明1, 小松田 広美1, 田村 正通2, 木村 明英2

Tomoya KOMATSUDA1, Hideaki ISHIDA1, Hiromi KOMATSUDA1, Masamichi TAMURA2, Akie KIMURA2

1秋田赤十字病院消化器科, 2秋田赤十字病院小児科

1gastroenterology, Akita Red-cross hospital, 2Pediatrics, Akita Red-cross hospital

キーワード :

【はじめに】
小児の感染症に対しCeftriaxion(以下,CTRX)が広く用いられている.しかし,CTRXは,胆汁中に排泄された後カルシウムイオンと結合し沈殿することも知られており,これが結合し結石類似の集合体を形成したものが偽胆石である.今回我々は,偽胆石と思われる症例を検討し若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
2011年10月から2012年9月までの1年間に当院小児科に入院しCTRXで感染症治療がなされた23例(M:F=13:10,年齢:3ケ月-9歳(平均4.2歳))に対し入院中(主に病状軽快後,退院前)に早朝腹部超音波を施行し,偽胆石がみられた症例に関しては退院後外来で,偽胆石消失まで超音波検査を反復した.利胆剤服用は十分な病状説明の上で,希望された場合に行った.
【主な使用装置】
東芝社製:AplioXG, AplioXV(中心周波数:6-8MHz).
【結果】
1)5例(5/23(21.7%))に偽胆石と思われる所見を認めた.偽胆石(+)群5例は4-9歳(平均7歳),偽胆石(-)群18例は3ヶ月-9歳(平均2歳)であった.偽胆石(+)5例の偽胆石消失までの期間は,9-44日(平均26日)で最短の症例は利胆剤服用例であった.2)偽胆石(+)5例の超音波所見は,結石1個(1例),多数(4例),で全例に胆嚢壁のエコー輝度が上昇し,いわゆるcholesterosisの所見であった.肝内,肝外胆管,には結石はみられなかった.偽胆石消失直後もcholesterosisの所見は軽度に残っていた.
【まとめと考察】
偽胆石はCTRXとカルシウムイオンが結合した沈殿物であり,自然に排泄されることが多いとされている.しかし腹痛や胆嚢炎などを引き起こしたという報告もあり,やはり1)CTRX投与例に対しては偽胆石の有無を超音波でチェックすること,2)偽胆石が確認された症例では消失するまで超音波で経過をみることが必要であると考えられた.また検査所見を保護者にきちんと説明することも病状理解のために必要と思われた.今回の検討で示されたように,偽胆石形成にはcholesterosis,そしてその結合が関与しているものと推定された.なお偽胆石がみられた症例は,みられなかった症例より年齢的に高い傾向がみられたため(平均7歳対平均2歳),4歳以上の例に対しCTRX投与する場合は特に注意を払う必要があると思われた.