Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:胆のうⅠ

(S538)

急性胆嚢炎における各種超音波検査所見発現時間の検討

Examination of the various ultrasonographic finding revelation time in acute cholecystitis

川端 聡1, 田上 展子1, 尾羽根 範員1, 米澤 麻子1, 仙崎 菜々恵1, 森 亘平1, 植野 珠奈1, 西村 重彦2, 山片 重人2, 山田 晃3

Satoshi KAWABATA1, Nobuko TAGAMI1, Norikazu OBANE1, Asako YONEZAWA1, Nanae SENZAKI1, Kohei MORI1, Jyuna UENO1, Shigehiko NISHIMURA2, Shigehito YAMAGATA2, Akira YAMADA3

1住友病院診療技術部超音波技術科, 2住友病院外科, 3住友病院消化器内科

1Department of medical-examination Engineering Department, sumitomo hospital, 2Surgery, Sumitomo hospital, 3Digestive tract internal medicine, Sumitomo hospital

キーワード :

【目的】
胆嚢疾患における超音波検査(以下US)の有用性は既に周知の事実である.しかし急性胆嚢炎の発症初期においては必ずしもその典型像が得られるとは限らず,判断に迷う場合もしばしばみられる.そこで我々は超音波所見に,発症からの経過時間を加味させることにより,さらに診断精度の向上が期待できるのではないかと考え,各超音波所見が出現するまでの経過時間についての検討を行った.
【対象】
2010年1月から2012年12月までに,病理学的,または臨床的に急性胆嚢炎(慢性胆嚢炎の急性増悪を含む)と診断されたうち,発症日時が特定でき,且つUS施行までの期間に積極的治療が行われていなかった60症例(男性40例,女性20例,平均年齢69.0才).
【方法】
カルテから最初に胆嚢炎の症状が確認された日時を調べ,そこからUS施行までの時間を算出し,各経過時間におけるUS所見(胆嚢腫大,胆泥,壁肥厚,壁内透亮帯,胆嚢周囲液体貯留,膿瘍形成)の出現頻度について検討した.
【結果】
発症後10時間以内にUSが施行されたものは8例あり,その所見の内訳は,胆嚢腫大しかみられなかったものが5例(62.5%)ともっとも多く,次いで腫大+胆泥,腫大+壁肥厚,腫大+胆泥+壁肥厚がそれぞれ1例(12.5%)ずつみられた.発症24時間以降にUSが施行されたものは33例で,うち30例(90.9%)には少なくとも腫大+胆泥+壁肥厚がみられ,さらにこのうちの20例(60.6%)に透亮帯が,8例(24.2%%)に胆嚢周囲液体貯留がみられた.所見別にみると,胆嚢腫大のみがみられた9例中8例(88.9%)は,発症後10時間以内に出現しており,また腫大+胆泥+壁肥厚のみがみられた14例中13例(92.9%)は10時間以降で出現,透亮帯がみられた26例中20例(76.9%)は24時間以降に出現,胆嚢周囲液体貯留がみられた11例中8例(72.7%)は48時間以降に出現していた.さらに膿瘍形成がみられた1例は発症後約25日で確認されていた.これらのことから急性胆嚢炎のUS所見は,胆嚢腫大→胆泥・壁肥厚→透亮帯→周囲液体貯留→膿瘍形成の順に出現すると考えられた(表).
【考察】
急性胆嚢炎が疑われてUSを施行した際,胆嚢腫大しかみられなかった場合においても,発症後10時間以内であれば急性胆嚢炎を否定することはできないと考えられた.また,発症後24時間以上経っているにも関わらず胆嚢腫大,胆泥,壁肥厚の何れの所見もみられない場合は急性胆嚢炎の可能性が低いと判断できるのではないかと考えられた.