Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:腫瘍:造影超音波

(S537)

大腸癌に造影超音波検査と再発の予測について

Prediction of recurrence with contrast-enhanced ultrasonography in colorectal cancer

武藤 修一

Shuichi MUTO

苫小牧市立病院消化器内科

Gastroenterology, Tomakomai general hospital

キーワード :

【目的】
超音波検査は一般に汎用される検査であるが,消化器癌の術前精査に用いる場合は,Stageや転移性肝腫瘍の存在診断に用いられている.また,造影超音波検査を用いる事で転移性肝腫瘍の診断効率があがることが認識されているが,医師による静脈注射が必要など煩雑となり,一般的には使用頻度は高まっていない現状がある.その一方で,消化管疾患に対して,体外式腹部エコー検査を用いた消化管エコー検査の有用性は徐々に浸透しつつある.我々は大腸癌に対して,転移性肝腫瘍の存在診断と同時に,大腸の癌病変部をエコー検査で確認し,造影剤注入時の造影超音波の造影パターンとその後の再発について検討した.
【方法】
当院において平成20年1月から平成21年12月までに腹部超音波と手術を施行した大腸癌87症例を用いて造影パターン予後について検討を行った.また,Stage4を除外した71症例を対象として,その後の経過における再発の有無に付いて検討を行った.年齢は41歳〜93歳(中央値72歳)で,性別は男性46例女性41例,Stage4を除外した対象症例は男性38例女性33例であった.組織型は高分化・中分化管状腺癌74例に対し,それ以外の組織型は13例,Stage4を除外した場合は高分化・中分化管状腺癌59例に対し,それ以外の組織型は12例であった.腹部エコー検査にて大腸癌の腫瘍部を確認後,造影剤ソナゾイドを静注して,腫瘍内部の造影パターンを観察した.全体に造影されるものをdiffuse patternとし,造影されない部分が領域として少しでも認められるものをdefect patternとした.defect patternは,組織内のネクローシスと非常に強く関わる事を我々は報告してきたが,造影パターンが再発や生命予後を推測可能かについて検討を行った.
【成績】
平均約1000日間の経過においてKaplan Meier法にて検討を行うと,Stage4を除外した71症例において,defect pattern群はdiffuse pattern群に比し,再発が多く認められた(p=0.01).また,Stage4を含め87症例において,defect pattern群は有為に生存率も低かった(p<0.01).
【結論】
生存率は,Stage4の17症例の検討では,エコーパターンと死亡率の間に統計学的有為差は見られなかった.一方で,Stage4を除外した群においては,defect patternを呈する病変をもつ症例は再発も有意に高く,死亡率も有為に高かった.腫瘍組織内のnecrosisの存在が生命予後や再発と関連する報告もあり,我々の行った造影超音波検査の結果は,necrosisの存在を示唆しているものと考えている,術前に造影超音波検査を行い,造影パターンを確認する事により,その後の再発や生命予後を推測ができる可能性がある.造影超音波検査は,大腸癌の術前精査に非常に有用と考えられる.