Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:腫瘍:造影超音波

(S536)

乏血性高分化型肝細胞癌における造影超音波所見と動注CT,EOB-MRIとの比較検討

Investigation of the images of contrast-enhanced ultrasonography of well-differentiated hepatocellular carcinoma with poor arterial blood supply

出口 章広1, 高田 晃男2, 永松 洋明1

Akihiro DEGUCHI1, Akio TAKADA2, Hiroaki NAGAMATSU1

1公立八女総合病院肝臓内科, 2神代病院内科

1Hepatology, Yame General Hospital, 2Internal Medicine, Kumashiro Hospital

キーワード :

【目的】
乏血性高分化型肝細胞癌はその多くが早期肝細胞癌と考えられるが,早期肝細胞癌では造影超音波検査(CEUS)上特異度の高い所見がなくCEUSのみでの確定診断は困難とされている.しかし,早期肝細胞癌におけるCEUS所見の多数例での検討や動注CT,EOB-MRIとの比較検討までを含めた報告は少ない.今回我々は動注CTで乏血性を示し,組織学的に高分化型肝細胞癌(wdHCC)と診断された肝細胞癌患者においてCEUSとEOB-MRIとを施行し,その画像所見について比較検討を行ったので報告する.
【対象と方法】
対象は2008年3月から2012年7月の期間に腹部超音波で肝内結節を指摘され,かつ動注CTで乏血性を示し腫瘍生検でwdHCCと診断されたC型肝細胞癌患者43例(平均年齢75歳,男女比30:13),52結節(腫瘍径の中央値は12mm)である.これら症例を対象にそれぞれの結節についてBモードおよびCEUS所見と動注CT,EOB-MRIの所見について検討を行った.
【結果】
まずBモードでの所見を検討すると低エコーが29結節(55.8%),等エコーが5結節(9.6%),高エコーが18結節(34.6%)であった.これらを腫瘍径が15mm未満の結節と15mm以上の結節に分けて検討すると低エコー結節の割合は15mm未満の結節では61.5%であったのに対して15mm以上の結節では35.7%と低い傾向を認めた.さらにChild-Pugh scoreが5点の症例と6点以上の症例に分けて検討すると(腫瘍径の中央値はどちらも12mm),低エコー結節の割合は5点の症例では42%であったのに対して6点以上の症例では72%と高い傾向を認めた.次にCEUSの所見を検討すると,血管相で周囲肝より強く造影される結節は2結節(3.9%)のみであり,周囲肝と同程度に造影される結節が31結節(59.6%),ほとんど造影効果のない結節が19結節(36.5%)であった.血管相の所見は肝予備能や腫瘍径,Bモードの所見とは関連がなかった.次に後血管相における所見を検討すると,defectとして検出されるのは25結節(48%)にすぎず,他のモダリティにおける検出率はCTAP(67.3%),EOB-MRI肝細胞相(96.1%)であり,EOB-MRIと比べて有意に低かった.次に腫瘍径が15mm未満の結節と15mm以上の結節にわけて後血管相でdefectになる割合を比較すると15mm未満の結節では43.6%,15mm以上の結節では61.5%と15mm以上の結節の方が高い傾向を認めた.次にChild-Pugh scoreが5点の症例と6点以上の症例に分けて後血管相でdefectになる割合を比較すると,5点の症例では40%であったのに対して6点以上の症例では56%と高い傾向を認めた.また,Bモードの所見や腫瘍の局在部位との関連についても検討したが特に関連はなかった.さらにCTAPとの関連を検討すると,後血管相におけるdefectあり群とdefectなし群においてCTAPで門脈血流が欠損する結節の割合はそれぞれ60%と63%であり有意差を認めなかった.
【考察】
今回検討した乏血性高分化型肝細胞癌症例ではBモードの所見も様々であり,CEUSにおける造影パターンも特徴的なものはみられなかった.後血管相においてdefectになる割合も低く,CEUS単独での診断は困難と思われた.動注CTとの比較においても後血管相でdefectになるかどうかはCTAPでの血流低下とは相関がみられず,腫瘍径や背景肝の予備能と関連がみられた.以上のことから乏血性高分化型肝細胞癌においてはCEUS単独での診断は困難であり,診断率の高さからEOB-MRI検査が必須と考えられた.また,後血管相における所見がCTAPの所見と全く関連が見られなかったことから,HCCの進展におけるkupffer細胞の減少は門脈血流の低下とは関係なく,腫瘍の大きさや背景肝の性状と関連している可能性が示唆された.