Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:腫瘍:造影超音波

(S535)

造影超音波による肝癌の分子標的イメージング

Ultrasound Molecular imaging of the Liver

杉本 勝俊1, 根岸 洋一2, 濱野 展人2, 新槙 幸彦2, 森安 史典1

Katsutoshi SUGIMOTO1, Yoichi NEGISHI2, Nobuhito HAMANO2, Yukihiko ARAMAKI2, Fuminori MORIYASU1

1東京医大消化器内科, 2東京薬大薬物送達学教室

1Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University, 2Drug Delivery and Molecular Biopharmaceutics, Tokyo University of Pharmacy and Life Science

キーワード :

【目的】
分子標的イメージングはpositron emission tomography(PET)を中心に開発され,現在臨床応用されている.しかし,特定の分子を標的とした造影剤の開発により,超音波においても分子標的イメージングが開発されつつある.今回我々は,VEGFR2を標的とした分子指向性バブル(BR55)を使用する機会を得た.その特性につき従来の分子非指向性バブル(SonoVue)と比較して報告する.
【方法】
ヒト肝細胞癌株(Hep3B)をマウスの皮下に移植し作製した肝癌モデル(n=10),および健常マウスの肝臓(n=6)に対しBR55とSonoVueマイクロバブルをそれぞれ用いて造影実験を行った.超音波診断装置はAplio XVを用い,超音波造影剤をbolus静注後,10分間のdynamic imagingを撮像した.得られた時間輝度曲線を専用の解析ソフト(ImageLab)を用いて解析し,7つの血流パラメータを定量的に測定した.そして,得られた各造影剤間の血流パラメータを統計学的に比較した.さらに,腫瘍部と健常肝実質に対し抗VEGFR2抗体を用いて免疫染色し,VEGFR2の発現に関しても検討した.
【成績】
腫瘍部では,造影早期相においてBR55はSonoVueとほぼ同等の造影動態を呈した.しかし,その後SonoVueは速やかに減衰するのに対し,BR55の減衰はなだらかであった(mean transit time: P=0.0189).健常肝でも,造影早期相においてBR55はSonoVueとほぼ同等の造影動態を呈した.しかし,10分後の造影後期相において,BR55はSonoVueと比べ著明な取り込みを認めた(Ramp Slope: P=0.0099).免疫組織学的検討では,腫瘍の血管内皮細胞にVEGFR2がまばらに,かつ弱く発現していた.一方,健常肝実質の類洞には,びまん性に,かつ強く発現していた.
【結論】
BR55マイクロバブルは,腫瘍部のVEGFR2の発現を反映しており,今後臨床における有用性が示唆された.しかし,正常肝実質にも取り込みがみられ,その機序につき更なる検討が必要である.