Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌Ⅰ

(S535)

被膜を有する肝腫瘤における外側音響陰影の発生機序について

Lateral Shadow of capsulated hepatic tumor :computer analysis

宇野 篤1, 石田 秀明2

Atsushi UNO1, Hideaki ISHIDA2

1秋田県成人病医療センター消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Gastroenterology, Akita Medical Center, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々はこれまで超音波ビームの屈折による生じる各種アーチファクトをcomputer simulationを用いて解析し,その結果を報告してきた.今回は,肝腫瘤の外側音響陰影発生機序の検討をもとに,被膜を有する肝腫瘤における超音波の屈折と,それにより生じる外側音響陰影の発生機序を検討したので報告する.
【基礎的検討(方法)】
1)観察対象物として肝腫瘤のほかに,その後方に仮想的な膜様の構造物が等間隔に存在するものと仮定し,画像の歪みの出現形態と程度を検討する際の指標とする.2)肝〜肝腫瘤〜仮想膜様構造物と近傍の超音波伝搬経路を計算し超音波ビームの軌跡を表示.音速は肝:1540 m/s,腫瘤被膜部:1600 m/s,腫瘤内部:1580 m/s とし,仮想膜様対象物においてビームの屈折反射は生じないものとした.3)超音波伝搬経路を元に,観察対象物が実際にはどのように装置に超音波画像として表示されるか計算する.4)最後に,ビームの軌跡と装置に表示される対象物を重ねて表示し像を解釈・検討した.
【基礎的検討(結果)】
1)超音波ビームの屈折様式:一般的に音速が遅い肝から音速が速い腫瘤に超音波ビームが入射する形になる.a) 腫瘤に被膜がない場合,ビームは腫瘤を中心として左右外側方向に散らばるように屈折した.また腫瘤外側辺縁部に入射した場合は条件により腫瘤表面で全反射した.b) 腫瘤が被膜を有する場合,外側辺縁部の腫瘤に入射したビームの多数は外側方向に屈折した.これにより病変部外側部から側〜下方にかけて,ビームが存在しない領域(無ビーム域)が生じた.外側方向に屈折するビームの本数は被膜の厚さに比例した.2)腫瘤後方の仮想膜様構造物は腫瘤外側部後方の領域で特に急峻に偏位し表示上の断裂を認めた.3)像の偏位・断裂の程度は病変部の後側方ほど,また被膜が厚いほど大きかった.
【まとめ・考察】
肝腫瘤における外側音響陰影は装置が対象物を表示する際の歪みに由来する.腫瘤により屈折したビームがとらえた対象物を装置が誤った位置に表示することが偏位である.ビームの屈折が非常に大きい場合は情報が破綻し,装置が画像を表示することが不可能となるため音響陰影が発生する.「ビームが通過しない領域」=「外側音響陰影」として装置に表示されているわけではないことを再認識し検査に臨むことが,像の正しい解釈につながるものと思われた.