英文誌(2004-)
一般口演
消化器:消化器Ⅱ
(S531)
急性腹症の時間外診療における腹部超音波検査の有用性と限界
Usefulness of abdominal ultrasonography in acute abdomen
富澤 稔1, 篠崎 文信2, 長谷川 留魅子3, 白井 芳則3, 一木 昇3, 杉山 隆夫4, 山本 重則5, 吉田 孝宣6
Minoru TOMIZAWA1, Fuminobu SHINOZAKI2, Rumiko HASEGAWA3, Yoshinori SHIRAI3, Noboru ICHIKI3, Takao SUGIYAMA4, Shigenori YAMAMOTO5, Takanobu YOSHIDA6
1独立行政法人国立病院機構下志津病院消化器内科, 2独立行政法人国立病院機構下志津病院放射線科, 3独立行政法人国立病院機構下志津病院外科, 4独立行政法人国立病院機構下志津病院リウマチ科, 5独立行政法人国立病院機構下志津病院小児科, 6独立行政法人国立病院機構下志津病院内科
1Department of Gastroenterology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 2Department of Radiology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 3Department of Surgery, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 4Department of Rheumatology, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 5Department of Pediatrics, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital, 6Department of Internal Medicine, National Hospital Organization Shimoshizu Hospital
キーワード :
【目的】
平日の通常の診療時間内ではCTを含めて十分な精査を行うことができる.しかし時間外の診療ではCTを含めたレントゲン検査,血液検査を行うことができない.こうした限られた状況では腹部超音波検査が唯一の検査手段となる.そこで時間外の急性腹症診療における腹部超音波検査の診断能を検討し,その有用性と限界を探った.
【方法】
平成21年11月より同24年11月まで腹痛等の症状で当院を時間外に受診した症例または入院症例の中で腹部超音波検査を施行した症例をretrospectiveに解析した.他院を紹介した場合は返信があり診断が確定したものを選択した.超音波診断とその後の診療に基づく確定診断を比較検討した.
【結果】
外来37例,入院5例であった.腹部超音波診断とその後の診断の一致した例は34例,不一致は8例であった.診断一致例では急性虫垂炎9,閉塞性黄疸6,急性膵炎4,憩室炎3,腸炎3,イレウス2,胆嚢炎1,骨盤腹膜炎1,大腸癌2,子宮頚癌術後再発1,消化管穿孔2であった.不一致例では腹部超音波検査→確定診断がそれぞれ腹水→突発性腹腔内出血1,急性膵炎→異常なし1,虫垂炎→憩室炎1,胆嚢炎→急性膵炎1,腹膜炎→小腸アニサキス1,腹膜炎→左卵巣腫瘍茎捻転1,腹膜炎→子宮筋腫の炎症1,上部消化管出血→出血性胃潰瘍+腸管壊死1であった.不一致例にみられる腹膜炎の3症例は腹部超音波検査で腹水がみられ消化管に液体が貯留し蠕動の低下と圧痛がみられたため腹膜炎が疑われ,より高次の施設に診療を依頼した.腸管壊死の症例は胃内の液体貯留が著明で上部消化管出血が疑われたが腹痛が強く他に重篤な疾患が併存する可能性があり,より高次な施設に診療を依頼して判明した.
【考察】
腹部超音波検査は消化管の領域まで広げると急性虫垂炎,大腸憩室炎,腸炎等比較的頻度の高い疾患診断する能力に優れている.また大腸癌等の悪性疾患を診断することも可能である.さらに消化管穿孔といった重篤な疾患を診断することも可能である.CT等の精査を行うことができない環境でも迅速に診断し治療方針を検討するためには腹部超音波検査は必須と考えられる.一方では子宮・卵巣等の消化管に取り囲まれた領域を正確に診断することは困難と考えられる.腸管壊死の例でみられるように重篤な疾患であっても腹部超音波検査では診断が困難なことがあるので腹部超音波検査のみならず臨床徴候も加味して診療を行うことが必要と考えられる.