Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:膵の造影

(S527)

膵癌の造影エコーパターンは予後予測因子になりうるか?

Can contrast enhanced sonography be a prognostic factor of small pancreatic cancers?

松田 正道1, 渡邊 五朗1, 橋本 雅司1, 竹内 和男2

Masamichi MATSUDA1, Goro WATANABE1, Masaji HASHIMOTO1, Kazuo TAKEUCHI2

1虎の門病院消化器外科, 2虎の門病院消化器科

1Dept of Surgery, Toranomon Hospital, 2Dept of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
第77回の本学会(2004年宇都宮)で我々は,開腹下にレボビストによる術中造影エコーを行い,2cm以下の小膵癌(TS1)の染影効果を評価し報告した.TS1膵癌は全体が染影されるものと辺縁のみが染影されるものに分類され,組織学的所見との対比から,マイクロバブルの分布が腫瘍腺管の多寡・腫瘍内線維化の程度・血管の開存性に影響され,腫瘍のBiological behaviorの一つとして予後予測因子になりうるのではないかと推測した.今回の報告はその後の臨床経過を追跡しその真偽を評価したものである.
【方法】
対象は術中造影エコーを行ったTS1の浸潤性膵管癌7例 (Stage I/II/III/IVa: 1/0/3/2,男/女:3/4)である.東芝社製Aplio(Advanced dynamic flow,送信周波数4.4MHz,MI値1.6,病変の下端singleのfocus point)を用い,開腹し膵を直視下に置いた状態でレボビスト(300mg/ml) 7mlを肘静脈からボーラスに投与した.臨床経過は病歴ベースで術後補助化学療法,無再発生存期間,再発形式,再発後化学療法,生存期間を調査し造影エコー所見と対比した.
【結果】
造影エコーでは,腫瘍全体が染影されるもの(以下全染;3例)と辺縁のみが染影されるもの(以下辺染;4例)に分類された.全染3例中の1例(St.III)が8年無再発生存中,1例(St.I)が5.1年でリンパ節再発をきたしBSCで7.8年で死亡した.他の1例(St.III)は術後1年で肝転移をきたし,化学療法に反応せず1.8年で死亡した.辺染4例中1例(St.III)が8年無再発生存,1例(St.IVa)が3.4年で肺転移をきたしたが化学療法が奏功し6.1年で死亡した.他の2例(St.III,IVa)は1年半以内の早期に再発し,化学療法が奏功せず1.7-2.1年で死亡した.
【考察】
体外式USでは,被験者の体格や病変部位による描出能の優劣が生じる.開腹下の造影エコーを選択したのは,再現性・比較可能性を均一化するためであり,また2cm以上の膵癌ではそもそも予後が期待できないため,対象をTS-1に限定した.客観的な評価が難しく,術者の主観が介入する研究ではあったが,病理組織学的所見との対比においても2種の染影効果が示され,これが予後予測因子の一つになりうるのではないかと期待した.しかし残念ながら今回の研究では無再発生存期間,再発形式,抗癌剤の有効性,生存期間のいずれにも一定の傾向は見いだせず,膵癌の造影エコーパターンは抗癌剤の感受性や予後には寄与しないと結論づけざるを得なかった.わずか7例の評価であり,また統計学的手法を用いた評価ではないため定言は避けねばならないが,造影パターンと膵癌の予後に関する一つの回答として報告を行うこととした.