Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:Virtual Touch Tissue Quantification(VTTQ) Ⅰ

(S526)

VTTQを用いて測定した脾および肝硬度と食道・胃静脈瘤を含む側副血行路との関連

Usefulness of spleen stiffness measurement using VTTQ for diagnosis of esophagogastric varices including the relationship with collateral vesseles

西村 純子1, 田中 弘教1, 2, 吉田 昌弘1, 橋本 眞里子1, 柴田 陽子1, 東浦 晶子1, 山平 正浩1, 廣田 誠一3, 西口 修平2, 飯島 尋子1, 2

Junko NISHIMURA1, Hironori TANAKA1, 2, Masahiro YOSHIDA1, Mariko HASHIMOTO1, Youko SHIBATA1, Akiko HIGASHIURA1, Masahiro YAMAHIRA1, Seiichi HIROTA3, Syuhei NISHIGUCHI2, Hiroko IIJIMA1, 2

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学内科・肝胆膵科, 3兵庫医科大学病院病理部

1Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, 2Depertment of Internal Medicine, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, 3Depertment of Surgical Pathology, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【目的】
我々はこれまでVirtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)による脾硬度測定の食道静脈瘤存在予測や進行食道静脈瘤予測における有用性を報告してきた.今回脾および肝硬度と,食道・胃静脈瘤およびその他側副血行路との関連について検討した.
【方法】
2010年12月から2012年10月に上部消化管内視鏡検査を施行し,かつ脾臓と肝臓のVTTQを同時に施行し得た慢性肝疾患患者127例を対象とし,食道・胃静脈瘤の形態(form0, 52例; form1, 54例; form2, 21例)およびRCサインの有無(陰性,110例; 陽性,17例)と検討を行った.このうち造影CT/MRIを施行した93例は,脾腎短絡路等のその他側副血行路の有無とも検討した.装置は持田シーメンスACUSON S2000を使用した.脾臓と肝臓のせん断弾性波速度(Vs値; m/s)は,安定して測定できた5回の平均値とした.①脾および肝Vs値についてはSpleen index(SI;千葉大学第一内科の式,cm2)等の臨床パラメータとともに,Receiver operating characteristic(ROC)解析により食道・胃静脈瘤の存在診断能(form1以上)および進行食道・胃静脈瘤診断(form2以上)を検討した.②脾および肝Vs値における側副血行路の影響について,食道・胃静脈瘤の形態別に検討した.
【結果】
①食道・胃静脈瘤の形態別の脾および肝Vs値はそれぞれform0: 2.59±0.49, 1.47±0.61,form1: 3.04±0.39, 2.22±0.62,form2: 3.65±0.46, 2.46±0.76といずれも食道・胃静脈瘤の進展に伴い増加し,脾・肝ともにform0とform1〜2で有意差を認めた(p<0.001).form1とform2については脾のみで有意差を認め (p<0.001),肝では認めなかった(p=0.142).RCサインの有無で比較すると,脾・肝Vs値はともに陰性群に比べ陽性群で有意に高値であった(脾p<0.001, 肝p=0.002).また,各臨床パラメータの食道・胃静脈瘤存在診断能および進行食道・胃静脈瘤診断能をROC解析にて検討したところ,曲線下面積はそれぞれ脾Vs値: 0.815, 0.889,肝Vs値: 0.826, 0.726,血小板: 0.814, 0.724,SI: 0.818, 0.716,PT: 0.775, 0.720,ヒアルロン酸: 0.851, 0.823,APRI: 0.775, 0.682であり,食道・胃静脈瘤存在診断能については脾・肝Vs値,血小板,SI,ヒアルロン酸で0.8以上と良好であったが,進行食道・胃静脈瘤診断能については脾Vs値のみで0.85以上の良好な結果が得られた.②脾および肝Vs値を,食道・胃静脈瘤の形態別にその他側副血行路の有無で比較したところ,form1群では脾・肝Vs値ともに有意差を認めなかった(p=0.348, p=0.816).Form2群では,脾Vs値はその他側副血行路あり群の方がなし群に比べ有意に低値であったが(なし,3.74±0.11; あり,3.32±0.14; p=0.030),肝Vs値では有意差を認めなかった(p=0.902).進行食道・胃静脈瘤のある症例ではその他側副血行路の存在により門脈圧は低下し,その影響で脾硬度が低下したと推測する.
【結語】
VTTQによる脾および肝硬度は食道・胃静脈瘤存在診断に有用であり,特に脾硬度は進行食道・胃静脈瘤診断において期待が持たれる.