Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝:治療効果判定Ⅰ

(S522)

肝細胞癌に対する重粒子線治療後の血流評価

Utility of Sonazoid enhanced ultrasonography after Proton beam therapy for hepatocellular carcinoma

加藤 真里1, 田中 正俊2, 水島 靖子1, 下瀬 茂男3, 大野 美紀3, 中島 収4, 山口 倫1

Mari KATOU1, Masatoshi TANAKA2, Yasuko MIZUSHIMA1, Shigeo SHIMOSE3, Miki OHNO3, Osamu NAKASHIMA4, Rin YAMAGUCHI1

1久留米大学医療センター臨床検査室, 2医療法人弘恵会ヨコクラ病院消化器内科, 3久留米大学医療センター消化器内科, 4久留米大学病院臨床検査部

1Department of Clinical Laboratory, Kurume University Medical Center, 2Department of Gastroenterology, Yokokura Hospital, 3Department of Gastroenterology, Kurume University Medical Center, 4Department of Clinical Laboratory, Kurume University Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝細胞癌に対し重粒子線治療(以下治療)を行った症例において,治療後の造影超音波検査(以下CE-US),造影CT検査もしくはEOB造影MRI検査(以下EOB-MRI)を行い,治療照射部と腫瘍血流に関する知見を得たので報告する.
【対象と方法】
(症例1)60代,男性.肝S4に4.5cmの肝細胞癌を指摘.切除適応症例であったが,本人の意向で粒子線治療を選択.陽子線66GyE/10回の照射を施行.(症例2)70代,男性.C型肝炎で経過観察中,肝S4ドーム直下に肝細胞癌再発を指摘.粒子線治療を選択.陽子線66GyE/10回の照射を施行.(症例3)80代,女性.C型肝炎で経過観察中,肝S6に肝内転移を伴う16mmの肝細胞癌を指摘.認知症を患っているため,粒子線治療を選択.陽子線66GyE/10回の照射を施行.治療後3ヵ月,6ヵ月と経時的にCE-US,EOB-MRIあるいは造影CT検査を施行し,治療後の変化を検討した.
【結果】
CE-US:治療部の動脈血流は,門脈血流の低下に伴い相対的に増加し,後血管相では,欠損像を呈した.造影MRI/CT検査:いずれの症例も,腫瘍部は,治療後3ヵ月では,まだ腫瘍濃染を認め,6ヵ月の経過で腫瘍濃染が消失した.また,治療部は,3ヵ月後,6ヵ月後ともに,EOB-MRI肝細胞相で低信号域(CTでは低吸収域)を呈した.なお,CE-US後血管相での欠損域が,EOB-MRI肝細胞相での低信号域と完全に一致することを,フュージョン機能を用いて確認した.
【考察】
超音波検査による診断は,治療後に腫瘍自体が不明瞭化するため,Bモードでは評価が困難な場合があるが,CE-US後血管相での欠損領域が,EOB-MRI肝細胞相での低信号域と完全に一致するので,CE-US後血管相で治療部の同定と経時的観察が可能と思われる.また,CE-US後血管相で欠損像を呈したことから,治療部は放射線傷害を受け,クッパー細胞の数の減少もしくは機能低下が起きていることが示唆された.さらに,腫瘍濃染に関しては,経時的な変化を示していることから,治療後すぐに評価するのではなく,6ヵ月以上の長期的な経過観察が必要だと考えらえた.
【結語】
CE-USの後血管相を評価すれば,重粒子線治療における治療部が同定できる.