千葉 三保, 内藤 雅文, 松村 有記, 北 久晃, 中田 悠紀, 前田 晃作, 道田 知樹, 伊藤 敏文

Miho CHIBA, Masahumi NAITO, Yuki MATSUMURA, Hisaaki KITA, Yuuki NAKADA, Kousaku MAEDA, Tomoki MICHIDA, Toshihumi ITO

大阪厚生年金病院消化器内科

gastroenterology, Osaka Kouseinenkin Hospital

キーワード :

【目的】
Sonazoid造影超音波検査における後血管相での完全な欠損は，転移性肝腫瘍の診断に有用であることが報告されてきた．また，血管相では腫瘍辺縁のリング状濃染が特徴的とされるが，その所見に合致しない症例も多く経験される．今回我々は，転移性肝腫瘍における，Sonazoid造影超音波検査での血管相の血流動態について検討したので，文献的考察を含めて報告する．
【対象と方法】
2008年6月〜2012年11月において，CT /MRI等で指摘された転移性肝腫瘍が疑われる28症例についてSonazoid造影超音波検査を実施し，詳細な血流動態が解析可能であった20症例20結節を対象とした．症例は男性13例，女性7例で，平均年齢は67.7歳．腫瘍径は28.0±16.3mmで，原発巣の内訳は，大腸癌7例，胃癌5例，膵癌3例，乳癌，GIST，胆管細胞癌，胆嚢癌，十二指腸乳頭部癌が各1例ずつであった．使用装置は東芝Xario，日立アロカAscendusで，Sonazoidを0.5ml/Bodyでボーラス投与し，Sonazoid静注後15〜30秒を血管相早期相，20〜60秒を血管相後期相，10分後以降を後血管相と定義した．
【結果】
血管相早期相では，20例中14例（70％）で腫瘍濃染がみられ，5例（25％）でリング状濃染がみられた．早期相〜後期相にかけては，主に以下にしめすような3つの血流動態となった．①血管相早期相〜後期にかけて腫瘍濃染がみられたものが20例中6例（30％）②血管相早期相で腫瘍濃染，後期相にかけてリング状濃染がみられたものが20例中7例（35％）③血管相早期相〜後期相にかけてリング状濃染がみられたものが20例中5例（25％）であった．原発巣と造影所見，及び，腫瘍径と造影所見に有意な相関はみられなかった．後血管相では全例が欠損と判定された．
【考察】
転移性肝腫瘍が呈するリング状濃染は，辺縁部にviableな腫瘍細胞が存在し，中心部は線維性壊死に陥っているためと考えられるが，今回の検討では，大腸癌や胃癌などの消化器癌，膵癌，乳癌の転移性肝腫瘍においても，中心部への腫瘍濃染が多くみられた．Sonazoid造影超音波は，小さな腫瘍径の転移性肝腫瘍においても，リアルタイムに血流動態を評価でき，リング状濃染のほかに腫瘍濃染，腫瘍濃染からリング状濃染への移行など多彩な血流動態を観察可能であった．