山平 正浩¹, 田中 弘教^{1, 2}, 吉田 昌弘¹, 西村 純子¹, 東浦 晶子¹, 柴田 陽子¹, 橋本 眞里子¹, 廣田 誠一³, 西口 修平², 飯島 尋子^{1, 2}

Masahiro YAMAHIRA¹, Hironori TANAKA^{1, 2}, Masahiro YOSHIDA¹, Junko NISHIMURA¹, Akiko HIGASHIURA¹, Youko SHIBATA¹, Mariko HASHIMOTO¹, Seiichi HIROTA³, Syuhei NISHIGUCHI², Hiroko IIJIMA^{1, 2}

¹兵庫医科大学超音波センター, ²兵庫医科大学内科学肝胆膵科, ³兵庫医科大学病院病理部

¹Ultrasound Imaging center, Hyogo College of Medicine, ²Division of Hepatobiliary and Pancreatic diseases, Department of Internal medicine, Hyogo College of Medicine, ³Department of Surgical Pathology, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【目的】
非アルコール性脂肪肝炎（NASH）は非アルコール性脂肪性肝疾患（NAFLD）の重症例で肝硬変や肝癌の発生が高率であり臨床上，鑑別が重要である．しかし，その診断について種々の検討がなされているが，肝生検による病理学的診断しか確立されたものはない．以前より我々は超音波造影剤Levovistを用いたNASH診断法を報告してきた．今回，超音波造影剤Sonazoidを用いたNASH診断法について検討した．
【対象・方法】
病理組織学的にNASHおよび脂肪肝（FL）と診断され造影超音波（CEUS）を施行した症例の診断能を比較検討した．（Levovist CEUS: NASH 35例，FL 6例．Sonazoid CEUS: NASH 32例，FL 5例）CEUSの使用機種は東芝AplioXG，超音波造影剤はLevovist 1.25g，Sonazoidは推奨容量の1/1200量をbolus静注し，各々20分後と40分後で右肋間走査により高音圧で照射し得られた画像をoff-lineにて輝度解析した．病理診断をゴールデンスタンダードとしてLevovist CEUSおよびSonazoid CEUSにより得られた肝実質の輝度値（各々Levo20，Sona40）を比較検討した．
【結果】
NASHとFLの臨床背景を比較したところ，性別，年齢，BMI，腹囲に有意差はなかった．血液検査値では血清鉄のみ有意差を認めた．また，Levo20およびSona40は，いずれも有意差を認めた．血清鉄はNASHで平均122.8μg/dlでありFL平均81.8μg/dlより高値であった．（p＜0.05）Levo20はNASHで平均26.2，FL平均124.9，Sona40はNASHで平均72.9，FL平均145.7といずれもNASHで低くなった．NASHの診断能についてROC曲線を用いて解析すると，曲線下面積は血清鉄0.913，Levo20 0.995，Sona40 0.881とLevo20の診断精度が高かった．
【考察】
血液検査で肝機能障害を指摘され，画像検査で脂肪肝と診断される患者は非常に多く，メタボリックシンドロームとともに今後増加傾向にあると思われる．これらの患者群からNASHを鑑別するため，全例に肝生検を施行するのは現実的でない．今回の検討でLevo20，Sona40がNASHで有意に低値であり，肝生検を施行する患者を拾い上げる一助になると考える．また，NASHで血清鉄が有意に高値となったことから，肝への鉄蓄積がNASHにおける酸化ストレスの一因となっていることが示唆される．
【結語】
超音波造影剤LevovistおよびSonazoidを用いた肝実質での輝度値は，NAFLDの中からNASHの拾い上げに有効である．