Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患Ⅰ

(S515)

超音波による脂肪肝の診断:その現状と新指標 fine echo textureの可能性について

Fine echo texture: a candidate diagnostic criterion for fatty liver

紺野 啓, 津田 恭子, 鯉渕 晴美, 宮本 倫聡, 神田 美穂, 谷口 信行

Kei KONNO, Kyoko TSUDA, Harumi KOIBUCHI, Michiaki MIYAMOTO, Miho KANDA, Nobuyuki TANIGUCHI

自治医科大学臨床検査医学

Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University School of Medicine

キーワード :

【背景】
脂肪肝は最も頻度の高いびまん性肝疾患であり,そのほとんどが超音波により診断されている.本症の典型的な超音波像の特徴は,実質エコーレベルの上昇ときわめて均質なエコーテクスチャ(echo texture)である.前者は肝腎コントラストを含めて本症診断の主たる指標とされている.これに対し,後者は正常肝に比してより均質性の高い特徴的なパターンであり,近年のRF信号の解析による定量的評価の結果などから,本症診断の指標としての有用性が示唆されているものの,超音波像のパターンに基づく診断は一般には行われていない.また本症にみられる肝実質のエコーテクスチャは,正常肝と同様,「均一(homogeneous)」と表現されるのが一般的だが,これでは正常肝との均質性の違いを明確に表現できない.
【目的】
超音波による脂肪肝診断の現状と問題点を明らかにし,本症の超音波像における肝実質エコーテクスチャの均質性を指標とした診断の可能性について検討した.
【対象と方法】
腹部超音波検査を施行した498例を対象とした.このうち超音波検査の前後1か月以内に腹部単純CTを施行した症例は223例で,うちCTにて有意な脂肪沈着を認めたのは44例であった.これらについて超音波による脂肪肝の診断指標となる以下の所見について検討した.1)実質のエコーレベル上昇,2)肝腎コントラスト,3)脈管の不明瞭化,4)深部エコー減衰.さらに5)実質のエコーテクスチャについては,これまで均一(homogeneous)と表現されてきたパターンを,典型的な脂肪肝にみられるより緻密なパターンfineと,正常肝にみられるパターンmoderateに分け,これまで不均一(heterogeneous)と表現されてきたものをcoarseとして計3段階に再分類し,評価・検討した.
【結果】
1.超音波検査施行例498例中,超音波所見にて脂肪肝と診断したものは194例(39.0%)であった.2.CT施行例223例中,CT所見にて優位な脂肪沈着を認めた44例(19.7%)のうち慢性肝疾患の合併がみられた3例(1.3%)を除外し,これ以外の41例(18.4%)を脂肪肝と診断した.3.CT所見をもとに脂肪肝と診断した41例における上記所見の出現頻度はそれぞれ,1)実質のエコーレベル上昇32例(78.0%),2)肝腎コントラスト28例(68.3%),3)脈管の不明瞭化26例(63.4%),4)深部エコー減衰20例(48.8%),5)fineエコーテクスチャ 35例(85.4%)で,fineエコーテクスチャの出現頻度が最も高かった.また41例中37例(90.2%)で1)−5)のいずれかの所見を認めた.4.肝腎コントラストについては評価不能例が7例(17.1%)あり,内訳は観察不能1例(2.4%),肝腎同時描出困難2例(4.9%),慢性腎障害3例(7.3%),多発性嚢胞腎1例(2.4%)であった.
【考察】
今回の母集団における脂肪肝の真の有病率は不明だが,超音波とCTにおける検出率の差から,超音波は過大評価傾向,CTは過小評価傾向と考えられた.肝腎コントラストは脂肪肝の超音波診断に有用だが,判定不能例が少なからずあり,必ずしも確実な指標とはならないことが明らかとなった.今回検討した肝実質のfine echo textueは,脂肪肝において検討項目中最も高い出現率を示したことより,本症診断の有用な指標となる可能性がある.今後は実際の診断に際して客観性が確保できるか,正常肝とのオーバーラップが過大でないかなど,指標としての有用性について検証したいと考える.