田中 規子¹, 森藤 雅彦², 小畠 隆之³, 大藤 正雄², 坂本 昭雄²

Noriko TANAKA¹, Masahiko MORUIFUJI², Takayuki OBATA³, Masao OOTOU², Akio SAKAMOTO²

¹さんむ医療センター検査科, ²さんむ医療センター消化器, ³千葉県放射線医学総合研究所

¹examination, sanmu medical center, ²intestinal medicine, sanmu medical center, ³National institute of Radiological Sciences

キーワード :

【目的】
非アルコール性脂肪性肝疾患（Non alcoholic fatty liver disease : NAFLD）は近年の食生活欧米化の影響で増加傾向にある．しかしその病態は必ずしも瀰漫性でなく診断が確立していないのが現状である．我々は3D超音波法（以下3D-US）の濃淡ヒストグラムによる可能なかぎりの定量解析を施行し，1H MR Spectroscopy（以下1H MRS）による化学的脂肪定量データとの比較検討をおこなった．
【対象】
2D超音波検査法（2D-US）にてbright liverの所見を認める20歳以上の成人および健常成人を対象とした．
【方法】
GE Healthcare製LOGIQ 7を用いて検討した．撮像条件は季肋部走査，深度15cm，フォーカス7.5cm，ダイナミックレンジ70，ゲイン60としてフォーカス付近にRegion of Interest （ROI）を設定，3D-US画像から画像処理ソフトImage-Jを使用解析した．ROI 中の濃淡ヒストグラムを肝/脾比（以下H/S histgram ratio）と肝/腎比（以下H/K histgram ratio）を計測し複数個所の平均を算出した．また，1H-MRS（PRESS法）データ収集はGE製signa HDxt3.0Tを用い（呼吸同期，TE35ms，64回加算）voxel size（VOI）15.6ml，右葉2箇所以上と左葉1箇所を試みた．MRS解析はLC Modelで行い，水を内部標準とする相対脂肪量（以下1H MRS ratio）を算出した．
【結果】
検者の主観が無視できないが2D-USにて軽度（n=14），中等度（n=12），高度（n=10）に定性的分類すると，軽症型の1H MRS ratioは0.046±0.024と0.1を超える症例は認めなかった．中等型は1H MRS ratio 0.166±0.102，重度は1H MRS ratio 0.338±0.021で1H MRS ratioに有意差を認めた（P＜0.01）．可能なかぎり客観的計測した3D-USによるH/S histogram ratioと1H MRS ratioを検討すると，Y=1.157+0.951 * X，相関係数r=0.679で有意に相関する傾向を認めた（P=0.015）．またH/K histogram ratioの検討でも，Y=1.411+2.021 * X，相関係数 r=0.635と有意の相関を認めた（P=0.026）．また1H MRS ratioと生化学的パラメータの解析ではγ-GTP，TG，AST，ALTと有意な相関を認めた（P＜0.01）がBMIやHOMA-IRとは相関をみなかった．
【結論】
3D-USを使用した肝/脾比および肝/腎・濃淡ヒストグラムは1H MRS ratioで得られた脂肪定量データと関連しており，周囲のアーチファクトをできるだけ除去できれば脂肪肝定量の有用な補助診断となる可能性がある．