Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌以外の造影Ⅰ

(S510)

肝悪性リンパ腫のSonazoid造影超音波所見;病理組織像との対比検討

Contrast-enhanced ultrasonography in hepatic lymphoma; Comparison with pathological findings

宮武 宏和1, 小林 功幸1, 岩堂 昭太1, 植松 周二1, 松浦 博夫2, 荒木 康之1

Hirokazu MIYATAKE1, Yoshiyuki KOBAYASHI1, Shouta IWADOU1, Shuji UEMATSU1, Hiroo MATSURA2, Yasuyuki ARAKI1

1広島市立広島市民病院内科, 2広島市立広島市民病院病理部

1Department of Internal Medicine, Hiroshima City Hospital, 2Department of Pathology, Hiroshima City Hospital

キーワード :

【背景と目的】
肝悪性リンパ腫の画像的特徴として腫瘍を貫通する血管像の描出が知られている.近年,造影超音波の血管相にて貫通血管像を得た報告が散見されるが,後血管相について検討された報告は少ない.今回,肝悪性リンパ腫のSonazoid造影超音波所見の特徴について後血管相及び病理組織像も含め検討した.
【対象と方法】
当院および三豊総合病院にて経験した造影超音波検査(CE-US)を施行した肝悪性リンパ腫4例.(MALTリンパ腫2例(うち1例肝原発),びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)2例).超音波診断装置は東芝社製Aplio XG, 日立社製 EUB8500, ALOKA社製 prosound α10を使用した.Sonazoidは0.0075-0.015ml/kgにてボーラス静注し,focusは腫瘍最下端に設定しMI値0.2-0.3にて血管相及び後血管相を撮像した.CD68染色によるKupffer細胞の分布の確認ができた症例1,4についてCE-US像と病理組織像の比較検討を行った.
【症例】
(症例1)肝原発MALTリンパ腫.径32mmのほぼ均一な低エコー結節.カラードプラにて貫通血管あり.CE-USでは動脈優位相で染影及び腫瘍内貫通血管を認める多血性腫瘍であった.後血管相では周囲肝と同等の染影を認めKupffer細胞の存在が示唆された.病理組織は,Glisson鞘部分に形成されたリンパ球の集族性増殖像からなっており,大小の斑状,網状,シート状の病巣を形成している(腫瘍内部に健常部を含む).腫瘍部と非腫瘍部(健常部)のCD68陽性細胞の分布は同等であった.(症例2) DLBCL.径117mmのやや不均一な低エコー結節.動脈優位相で不均一に染影及びやや不整な貫通血管を認めた.後血管相では大部分が完全欠損像となり,区域性に周囲肝と同等な染影部分が残存していた.(症例3)胃原発MALTリンパ腫.径100mmのほぼ均一な低エコー結節.動脈優位相で均一に染影及び貫通血管あり.後血管相ではまだら状に周囲肝と同等の染影を認めKupffer細胞の存在が示唆された.(症例4)回腸原発DLBCL.径16mmのやや不均一な低エコー結節.動脈優位相での染影は弱いが貫通血管あり.後血管相で完全欠損像であった.病理組織では,腫瘍は健常部を残さず増殖していた.CD68染色では,健常部に比して腫瘍部にCD68陽性細胞が多数認められたが,健常部のKupffer細胞と形態が異なっていた.
【結果と考察】
1)CE-US血管相では全例に腫瘍内貫通血管を認めた.病理組織では,MALTリンパ腫は正常肝に置換するように増殖し,腫瘍内には正常脈管構築が残存していた.DLBCLは正常域を残さず破壊性に増殖していた.貫通血管は,①腫瘍内に残存した正常脈管②島状に残存した正常肝組織内の脈管の両者が関与している可能性が考えられた.2)CE-US後血管相では,MALTリンパ腫での染影は同程度から低下しており(不完全欠損像),DLBCLで完全欠損であった.病理組織では,MALTリンパ腫では腫瘍内部に健常部が介在しており,腫瘍内にKupffer細胞と同形態のCD68陽性細胞が多数残存していた.DLBCLでも腫瘍部にCD68陽性細胞が多数認められたが形態が異なっており,肝外由来のCD68陽性細胞はsonazoidを取り込まない可能性が推察された.このことから,腫瘍に介在した正常肝の残存の程度が後血管相(Kupffer相)の染影の程度を決定することが推察された.
【結語】
肝悪性リンパ腫について,造影超音波所見と病理組織学的所見を対比し検討した.造影超音波では,動脈優位相-門脈優位相で腫瘍内貫通血管を認め,後血管相でDLBCLでは完全欠損,MALTリンパ腫では不完全欠損を認めていた.造影超音波 (特に後血管相)では,腫瘍の悪性度を反映した増殖パターンが推察され,肝悪性リンパ腫の診断に有用であると考えられた.