Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌以外の造影Ⅰ

(S510)

肝 Reactive Lymphoid Hyperplasia(RLH)の1例

A case report of Reactive Lymphoid Hyperplasia of the Liver

鈴木 誠治1, 竹田 欽一2, 西尾 雄司2, 安田 真理子2, 上野 泰明2, 伊藤 将倫1, 今泉 延1, 傍嶋 智恵美1, 野島 あゆみ1

Seiji SUZUKI1, Kinichi TAKEDA2, Yuji NISHIO2, Mariko YASUDA2, Yasuaki UENO2, Masatsugu ITOU1, Tadashi IMAIZUMI1, Chiemi SOBAJIMA1, Ayumi NOJIMA1

1名鉄病院放射線科, 2名鉄病院消化器内科

1Department of Radiology, Meitetsu Hospital, 2Department of Gastroenterology, Meitetsu Hospital

キーワード :

【症例】
43歳女性,飲酒習慣なし,経口避妊薬を約10年間服用.35歳の健診から肝機能障害を指摘されており,精査加療目的で当院受診.腹部超音波検査で肝S6に8mm大の腫瘤を指摘され精査となった.
【既往】
シェーグレン症候群
【血液検査所見】
GOT86U/ml,GPT100U/ml,ANA160倍,IgG2340mg/dl,γ-globurin23%,抗LKM−1抗体(−),HBs抗原,HCV抗体は陰性,AFP,PIVKA-Ⅱはともに正常範囲内であった.
【肝生検所見】
血液検査所見から自己免疫性肝炎(AIH)を疑い肝生検を行ったが,特異的ではなく非アルコール性脂肪肝炎(NASH)も疑われた.
【画像検査所見】
超音波検査で,肝S6に境界明瞭で整,内部均一な8mm大の低エコー腫瘤を認めた.ソナゾイド造影超音波検査では,腫瘤は血管相で肝実質よりやや早くほぼ均一に染影され,早期にwash outされた.同時に腫瘤辺縁は淡くリング状に染影し,腫瘤の周囲にも濃染を認めた.注入後約50秒では,腫瘤の内部が欠損像となり,辺縁,周囲の濃染は持続した.腫瘤内部に脈管貫通像は認めなかった.後血管相では腫瘤に一致して明瞭な欠損像を呈した.腹部単純CTではlow,造影では動脈相で濃染,門脈相・平衡相で周囲よりlowであった.腹部MRIではT1 low,T2軽度high,Gd-EOB-MRIの早期で均一濃染,肝細胞相で明瞭な欠損像を示した.以上より肝細胞癌,リンパ腫,肝細胞腺腫,炎症性偽腫瘍などの多血性腫瘍を疑ったが,肝悪性腫瘍を否定できず,本人希望により開腹手術にて肝部分切除術が行われた.
【肉眼的所見】
切除標本にて,病変は7mm大で白色,境界明瞭な充実性腫瘤であった.
【病理組織診断】
病理診断で病変は胚中心を複数持つ拡大したリンパ濾胞の形をとるRLHの所見であった.リンパ球に異形はみられず,悪性像を認めなかった.手術材料では背景病変はAIHと診断された.
【考察】
肝RLHは,臨床症状や画像診断上も特徴的な所見は示さず,術前診断は困難とされている.本症例では背景疾患としてAIH,NASHが疑われ,超音波・CT・MRI検査で肝細胞癌を否定できない所見を呈した.しかし,腫瘤のBモードでのエコーレベルは極めて低く,8mm大の小結節であったが,造影検査では多血性が著明であり,さらに腫瘤周囲も濃染を呈したことなど,肝細胞癌としては非典型的と思われる所見も見られた.また過去の報告では,RLHは自己免疫疾患・慢性肝炎との関連があるとされているが,本症例も背景疾患にAIH,シェーグレン症候群が指摘されており,その関連性が推測される.
【結語】
今回我々は比較的まれな疾患である肝RLHの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え,症例の蓄積の意味も含め報告する.