Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌以外の造影Ⅰ

(S509)

造影超音波検査を施行した肝原発MALTリンパ腫の1例

A case report of primary hepatic mucosa-associated lymphoid tissue (MALT) lymphoma diagnosed by contrast enhanced ultrasonography

菱田 光洋, 杉本 博行, 猪川 祥邦

Mitsuhiro HISHIDA, Hiroyuki SUGIMOTO, Yoshikuni INOKAWA

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学

Gastroenterological Surgery, Nagoya University

キーワード :

【症例】
68歳男性
【既往歴】
高血圧症,腰椎圧迫骨折,脊柱管狭窄症
【経過】
1年前に肝病変の指摘を受けたが放置していた.右鼡径ヘルニア嵌頓で緊急手術を施行した際のCTにて,肝病変を指摘され,精査することになった.dynamic CTを施行したところ,肝S4, S5, S8の一部に低吸収域を認め,内部を脈管が走行して楔状の形状を呈しており,限局性の脂肪肝が疑われた.しかし,腹部エコーでは,肝S5, S6領域に辺縁不整な低エコー領域を認めた為,ソナゾイドによる造影エコーを施行した.血管相では早期に濃染し,周囲肝実質よりやや低エコーでまだらとなった.また,腫瘍内部には明らかな脈管の走行を認めた.後血管相では,明らかに周囲肝実質よりも低エコーで辺縁不整な像を認め,悪性リンパ腫を疑った.EOB MRIでは,T1WIで低信号,T2WIで淡い高信号を呈する,6.5×4cm大の境界明瞭な領域を認めた.dynamic studyでは内部の脈管の走行を認め,全体的な造影効果は低く,漸増性に僅かな造影効果を認め,EOB MRIでも同診断に至った.血液検査では,RBC: 372万/mm3, WBC: 5200/mm3, Plt:23.6万/mm3, T-bil:1.3mg/dl, AST: 22IU/L, ALT: 22IU/L, ALP: 174IU/L, AFP: 3ng/ml, PIVKA-II: 47mAU/ml, CEA: 1.7ng/ml, CA19-9: 11U/ml, 可溶性IL-2レセプター: 769.0U/mlで,T-bil上昇および,PIVKA-II, IL-2レセプターの上昇を認めた.また,HBsAg(-),HCVAb(-)であった.確定診断のために,肝生検を施行したところ,intermediate size〜中型の類円形〜棍棒状の異型リンパ球および芽球化した大型の異型リンパ球が浸潤している像が観察され,アミロイド硬化像も認めた.免疫染色の結果,腫瘍細胞はCD20, BCL-2が陽性,CD3, CD5, CD10, CD20, cyclinD1, BCL-6が陰性で,MALT lymphomaと診断された.他の病変部位の確認のためにPET-CTを施行したところ,肝病変部以外には明らかなFDGの集積を認めず,肝原発と考えられた.以後,血液内科転科となり,化学療法施行となった.
【考察】
肝原発悪性リンパ腫は節外性悪性リンパ腫の0.41%,肝原発悪性腫瘍の0.07%と報告され,稀な疾患である.また,慢性性肝炎やヘリコバクター・ピロリ感染との関連性についての報告もある.造影エコーにて,腫瘍内を偏位なく貫通する既存の血管構造の所見に加え,樹枝状の濃染像が確認出来れば,悪性リンパ腫の診断の一助になるとの報告されている.今回の症例では,これまで報告されているような特徴的な所見が得られた.更に,後血管相での入り組んだ形の辺縁像も認め,これも肝悪性リンパ腫の特徴と思われた.
【結語】
今回,造影エコーが診断の一助になった肝原発MALTリンパ腫の1例を経験したので報告した.