Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌以外の造影Ⅰ

(S509)

造影超音波が診断に有用であった悪性リンパ腫の2例

Abdominal lymphoma;Contrast-enhanced US diagnosis in patients with atypicalB mode findings

大山 葉子1, 石田 秀明2, 長沼 裕子3, 櫻庭 里美4, 神馬 孝悦4, 渡辺 大輔5, 伊藤 恵子6, 須田 亜衣子6, 茂木 睦仁7, 星野 孝男8

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiriko NAGANUMA3, Satomi SAKURABA4, Kouetsu JINBA4, Daisuke WATANABE5, Keiko ITO6, Aiko SUDA6, Mutsuhito MOTEGI7, Takao HOSHINO8

1秋田組合総合病院臨床検査科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院内科, 4能代山本医師会病院臨床検査科, 5能代山本医師会病院消化器科, 6仙北組合病院臨床検査科, 7仙北組合病院内科, 8秋田組合総合病院消化器科

1Department of Medical laboratoly, Akita Kumiai General Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Medical Laboratry, Noshiro Yamamoto Medical Association Hpspital, 5Department of Gastroenterology, Noshiro Yamamoto Medical Association Hpspital, 6Department of Medical laboratoly, Senboku Kumiai Hospital, 7Department of Internal Medicine, Senboku Kumiai Hospital, 8Department of Gastroenterology, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹部悪性リンパ腫の多くは脾や後腹膜リンパ節病変を伴い,その特徴的Bモード所見から十分に診断可能なことが多い.今回我々は,その様な特徴的Bモード所見を欠き,造影超音波が病変の性状把握に有用であった2例を経験したので,その超音波像を中心に報告する.
【使用診断装置】
症例1:Aloka社製:α-10,症例2:東芝社製:Xario XG, (中心周波数3-4MHz).
【造影法の手順】
ソナゾイド(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍造影方法に準じた.
【症例1】
70才代女性.腹痛と食欲不振を主訴に来院.T-Bil4.3mg/dl など軽度肝機能異常あり.CTでS1に約90cm大の孤立性腫瘍を認めた.病変は,a)超音波検査でBモード上は無-低エコー領域が主体を占め,それに高エコー領域がわずかに不規則に混在する内部構造を呈しており,全体として膿瘍に類似したBモード所見であった.b)造影超音波上は無-低エコー領域を中心に病変全体が早期相からほぼ均一に濃染した.その濃染のパターンは,日常高頻度に遭遇する肝腫瘍(肝細胞癌,転移,血管腫,FNH)と異なり,太い血管が均等に分枝を繰り返し細分化していくものであった.この所見から悪性リンパ腫を強く疑った.腫瘍細胞診でリンパ腫が強く疑われた.全身CTで他臓器に異常なく当初外科治療も考慮されたが腫瘍の位置と伸展状況から断念.現在他施設で化学療法中である.
【症例2】
50歳代男性.全身疲労感にて来院,超音波検査で左腎の腫大あり.その実質パターンに乱れなく,カラードプラでも左腎の血管の偏移なし.造影超音波上,左腎全体が早期からほぼ均一に濃染した.その濃染のパターンは,症例1同様,太い血管が均等に分枝を繰り返し細分化していくものであった.この所見から悪性リンパ腫を強く疑った.他の臓器に悪性リンパ腫を疑わせる所見なし.腫瘍生検でMaltリンパ腫の診断であった.現在,化学療法を行い経過観察中である.
【まとめと考察】
悪性リンパ腫の占拠部位は全身に及び,この傾向は腹部にも当てはまり,今回提示した2例の様に,後腹膜リンパ節腫大や脾内病変を認めないケースも低頻度ではあるがありえる.一方で,悪性リンパ腫では病変の進展が速く早期診断と(それを基にした)早期の治療開始が必要となる.その意味で,今回の2例に見られた“太い血管が均等に分枝を繰り返し細分化していく”という造影超音波所見はその独自さから注目に値する.これは,悪性リンパ腫では,既存の血管を包むように病変部が伸展する,という組織学的な特徴を画像で表現しているものと思われる.今後,性状不明な病変に対し造影超音波的視点を加えることは診療の方向付けを補正するためにも大きな意味を持つものと期待される.