Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:肝癌以外の造影Ⅰ

(S508)

腹部リンパ管腫有症状例の検討

Symptomatic abdominal lymphangioma: report of three cases

鈴木 さとみ1, 小松田 智也1, 古川 佳代子1, 八木澤 仁1, 石井 透1, 衛藤 武1, 宮内 孝治2, 最上 希一郎1, 斉藤 謙3, 石田 秀明1

Satomi SUZUKI1, Tomoya KOMATUDA1, Kayoko FURUKAWA1, Hitoshi YAGISAWA1, Tooru ISHII1, Takeshi ETOU1, Takaharu MIYAUCHI2, Kiichirou MOGAMI1, Ken SAITOU3, Hideaki ISHIDA1

1秋田赤十字病院消化器科, 2秋田赤十字病院放射線科, 3秋田赤十字病院病理部

1Department of gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 2Department of radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Pathology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

リンパ管腫は全身の多臓器から発生しうる良性腫瘍で,腹部に関しても日常の超音波検査中にまれに遭遇することがある.多くは無症状であり有症状例に関しての報告は少ない.今回,我々はその様な3例を超音波像を中心に報告する.
使用装置:東芝社製AplioXG, Aplio 500.
使用超音波造影剤:Sonazoid(第一三共社)
症例1:50歳代男性.生来健康で医療機関受診は今回が始めてである.突然出現した高度の下腹部痛を主訴に当院救急外来受診.生化学データではCRPの軽度上昇のみを認めた.超音波上,上腹部ほぼ全体を占める巨大な腫瘤あり.その内部はほとんどが“蜂の巣”状構造を呈しており,CTでも同様の所見を示しており,その特徴的な所見からリンパ管腫と診断した.なおこの例では脾など他部位(腸間膜,後腹膜,など)にリンパ管腫は認められなかった.腹部症状は入院後約1週間後に軽快したがご本人の希望も強く腫瘍摘出術予定.
症例2:50歳代女性.右上腹部痛と軽度の肝機能異常の精査目的に他院から紹介.超音波上,肝門部を中心に上腹部ほぼ全体を占める巨大な腫瘤あり.その内部はほとんどが“蜂の巣”状構造を呈しており,CTでも同様の所見を示しており,その特徴的な所見からリンパ管腫と診断した.なおこの例では脾にも4cmのリンパ管腫を同時に認めた.肝外胆管が肝門部のリンパ管腫により軽度圧迫されており,これが肝機能異常の原因と考えられた.腹部症状は一過性ですぐに軽快した.現在外来で経過観察中.
症例3:30歳代男性.突然出現した腹部全体に及ぶ疼痛を主訴に他院から紹介.生化学データでは高度の貧血を認めた.超音波上,脾内と腸間膜に腫瘤あり.その内部はほとんどが“蜂の巣”状構造を呈しており,CTでも同様の所見を示しており,その特徴的な所見からリンパ管腫と診断した.症状が高度である事から緊急開腹術試行.術中,腸間膜リンパ管腫からの腹腔内出血が確認され腫瘍摘出術と摘脾画試行された.術後経過良好.
【まとめと考察】
腹腔内臓器から発生するリンパ管腫の多くは脾に限局することが多く,かつ無症状である.それと異なり今回提示した3例は脾外病変が主体のリンパ管腫であり病変占拠部位に差があった.リンパ管腫と症状の関連に関しては症例3や過去の報告例の検討からも出血や腫瘍径増大による近接臓器の圧迫が主因と考えられ,腹腔内に遊離している場合にそれが起きやすい,と考えられるが,この点に関しては更に多数の腹部リンパ管腫有症状例の検討が必要である.