Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
消化器:ナビゲーションシステム

(S507)

ファントムを用いた磁気センサー対応エコーガイド下穿刺の経験

Experience of the echo guide puncture corresponding to the magnetometric sensor using a phantom

三浦 隆生1, 小川 眞広1, 竜崎 仁美1, 中河原 浩史1, 落合 康博1, 森山 光彦1, 滝口 好子2, 尾山 彰子2, 杉本 朝子2, 新井 行平2

Takao MIURA1, Masahiro OGAWA1, Hitomi RYUUZAKI1, Hiroshi NAKAGAWARA1, Hiroyasu OTIAI1, Mitsuhiko MORIYAMA1, Yoshiko TAKIGUTI2, Akiko OYAMA2, Asako SUGIMOTO2, Kouhei ARAI2

1駿河台日本大学病院消化器肝臓内科, 2駿河台日本大学病院臨床検査部

1Gastroenterology and Hepatology, Surugadai Nihon University Hospital, 2Clinical examination part, Surugadai Nihon University Hospital

キーワード :

【目的】
超音波ガイド下穿刺は透視下のみの穿刺と異なり簡便性と安全性の面から肝癌治療をはじめとし,肝生検,胆管・胆嚢ドレナージなど幅広い分野で行われている用になった.この中でも近年肝細胞癌に対する経皮的ラジオ波焼灼術(以下RFA) で,多く使用されており磁気センサー対応の装置の出現によりNeedle Trackingと呼ばれる穿刺針の中に磁気センサーが装着され針の位置をリアルタイムでガイドする事が可能となり,より安全性の高い治療を行えるようになった.しかし,本システムは専用の針を用いる必要があり,穿刺針の種類,サイズ等適応の幅が狭くなるのが現状であった.今回穿刺針の手元に磁気センサーが装着可能なシステムが登場しこれまでの欠点を改善し今後幅広い適応拡大が予想されるため今回ファントム実験により長所と欠点を検討したので報告する.
【方法】
使用装置はGEヘルスケア社製LOGIQE9,使用探触子:9L, C1-5,CIVCO社製 Virtu TRAX Instrument Navigatorである.方法は穿刺針の手元に磁気センサーを動かないように固定する.その後穿刺針の先端までの長さを確認し長さを入力するか,穿刺針先端を磁気センサー下で読み込ませる事により,穿刺針自体の位置情報を認識させる.その後以下の3通りの方法で穿刺を試みた.穿刺方法は,①これまで使用していた穿刺アタッチメントを使用,②穿刺アタッチメントの角度が固定されていないもの,③穿刺アタッチメントを使用せずフリーの場所からの穿刺である.ファントム内の標的を設定し穿刺ガイドに従い標的のズレが最も小さくなる点で穿刺を行った.さらに③の場合には,穿刺の仮想のラインは描出されるものの,実際の針は超音波断面以外の方向からの穿刺となるため実際の映像は交差した時点のみしか描出されない.したがって穿刺経路のメージがつきにくいためreference画像として穿刺施行前に穿刺点を中心とした超音波画像のvolume dataを用いた.Reference画像は,2画面表示でOff-plane(通常のUS画像と直交する仮想断面)とIn-plane(実際のUS画像)のリアルタイム表示として用いた.
【結果】
VirtuTRAXを用いた穿刺では,穿刺針をfree handで行う場合はいわゆる通常観察されている穿刺画像はreference画像でOff-planeとして確認され,In-planeでは自由な角度から腫瘍を確認する事が可能であり,針先端の位置情報がリアルタイムで表示され先端部とIn-planeとの距離により先端部を示すboxが縮小・拡大し距離感が明瞭に確認された.また,今回ファントムでの試行ではあるが,プローブに限定されず腫瘍に対して多角度からアプローチを行う事が可能であった.
【考察】
実際の臨床における超音波ガイド下穿刺の欠点として①肺や腸管ガスなどにより穿刺経路が全て描出されない,②穿刺ラインがプローブに依存しているため穿刺方向が限定される,など超音波下特有の制限が認められてきた.Virtu TRAXを用いた穿刺は,アタッチメントからの任意角度での穿刺も可能となり現在の欠点を改善可能であることが確認され,エコー下穿刺治療において一石を投じたと考えられた.欠点としてはフリーハンドで行う穿刺の際に力加減による角度の差異が挙げられ,これは実臨床で皮下,肝実質のひずみにつながり今回のreference 画像に反映されていない事を理解する必要がある.しかし,すべてのケースにおいて深部方向の位置が明確となるため,針が超音波画面から消失した際の深部方向への誤穿刺等の偶発症は避けられると考えられた.今後針を固定するためのツールなどの開発が期待された.
【結語】
磁気センサーを用いたエコーガイド穿刺は安全性の面からも今後有用な手法になり得ると考えられた.