Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:先天性心疾患Ⅲ

(S503)

岐阜西濃地域の心エコー検査を用いた児童心臓3次検診の現状

Current Status of Children’s Heart Tertiary Screening with Echocardiography in Seino Region of Gifu Pref

井上 真喜1, 奥村 恭己1, 中村 学1, 後藤 孝司1, 橋本 智子1, 安田 英明1, 橋ノ口 由美子1, 澤 幸子1, 北洞 久美子1, 田内 宣生2

Maki INOUE1, Yasuki OKUMURA1, Manabu NAKAMURA1, Takashi GOTO1, Satoko HASHIMOTO1, Hideaki YASUDA1, Yumiko HASHINOKUCHI1, Sachiko SAWA1, Kumiko KITAHORA1, Nobuo TAUCHI2

1大垣市民病院形態診断室, 2大垣市民病院第二小児科

1Department of Clinical Reserch, Ogaki Municipal Hospital, 2The Second Pediatrics, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
岐阜県西濃地域では,先天性心疾患の早期発見を目的として,小学1年生を対象とした児童心臓集団検診を行っている.今回心エコー図検査を用いた児童心臓3次検診の現状について,動向を分析し,心エコー図検査の有用性を検討した.
【対象および方法】
岐阜県西濃地域における平成19年度〜23年度の小学1年生14,909名のうち,心雑音や心電図異常,調査票により3次検診を受診した心疾患の既往のない児童連続459名を対象とした.岐阜県西濃地域・児童心臓検診の流れは,県心臓検診委員会地区検診医による調査票や4誘導心電図検査などでの1次スクリーニング,小児循環器科医師による4誘導心電図再読影での2次検診で,3次検診受診の有無を判定される.このうち,既に医療機関にかかっている児童や,所見があった一部の児童は『直接3次』として直接医療機関で精密検査を受ける.3次検診は保健センターで,12誘導心電図,心エコー図検査,診察により判定され,このうち心電図検査と心エコー図検査は当院の医師と技師が担当している.
【結果】
3次検診受診者は年平均91.8名,合計459名であった.そのうち心エコー図検査有所見者は年平均6.0名,合計30名で,これは児童心臓検診受診者14,909名の0.2%にあたる.3次検診受診者に対する心エコー図検査有所見頻度は,平成22年度が9.1%で最も高く,平均6.5%であった.3次検診心エコー図検査有所見者の内訳は,心房中隔欠損症が1 0例(32.3%)で最も多く,次いで左室心筋緻密化障害7例(22.6%),心室中隔欠損症,僧帽弁閉鎖不全症,大動脈弁閉鎖不全症が各3例(9.7%),大動脈二尖弁と動脈管開存症が各2例(6.5%),冠動脈肺動脈瘻1例(3.2%)であった.一方,児童心臓検診を受診した全児童に対する,疾患ごとの検診前既知(『直接3次』として直接医療機関で精密検査を受けた児童)数と,3次検診心エコー図検査で初めて心疾患を発見された児童数との比率を見ると,3次検診心エコー図検査発見率の一番多いのが左室心筋緻密化障害で64%,ついで心房中隔欠損症38%,僧帽弁閉鎖不全症,大動脈弁閉鎖不全症,大動脈二尖弁などの弁膜疾患がそれぞれ33%であった.
【考察】
3次検診心エコー図検査発見人数から見ると各弁膜疾患と,動脈管開存症や心室中隔欠損症は同じくらいの人数だったものの,動脈管開存症や心室中隔欠損症の3次検診心エコー図検査による発見率はやや低く,児童心臓検診受診以前にすでに診断されていることが多い.これは就学前までの検診は聴診のみであるため,心室中隔欠損症,動脈管開存症などは心雑音指摘をきっかけに心エコー図検査を受けて発見される一方,心房中隔欠損症は心雑音を認めにくい場合があるため,心電図や心エコー図検査を受ける機会がないと見過ごされやすいと考えられる.同様に左室心筋緻密化障害も心エコー図検査を受ける機会がないと見過ごされると考えられる.
【結論】
心雑音や心電図などで検出しにくい,心房中隔欠損症,左室心筋緻密化障害,弁膜症などの疾患で心エコー図検査を用いた児童心臓検診は有用である.また就学前に聴診で見逃されてしまった可能性のある心室中隔欠損症や動脈管開存症などの先天性疾患の発見にも重要な役割を果たしていると考えられる.