Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:先天性心疾患Ⅲ

(S502)

乳児期に重症僧帽弁逆流による心不全に至ったtorn chordaeの3例

Severe heart failure resulting from torn chordae in infants

森 浩輝, 富松 宏文, 中西 敏雄

Hiroki MORI, Hirohumi TOMIMATSU, Toshio NAKANISHI

東京女子医科大学循環器小児科

Department of Pediatric Cardiology, Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

【目的】
乳児特発性僧帽弁腱索断裂は生後4−6ヶ月の乳児に好発するとされ,急性発症し重症心不全に至る原因不明の疾患である.当院経験症例のエコー画像を供覧しその特徴を考察する.
【症例1】
在胎39週で仮死なく出生した.周産期異常はなし.1ヶ月健診で心雑音を指摘され,心エコーで肺動脈狭窄症と診断された.生後3ヶ月から咳嗽がみられ,4ヶ月後半から哺乳の低下が見られた.尿量も低下し近医を受診した.聴診上,収縮期逆流性雑音みとめた.胸部レントゲンでは心拡大(CTR60%)および肺鬱血を指摘された.心エコーで腱索断裂による重症僧帽弁逆流をみとめた.経食道エコーでは前尖の中央にも逸脱をみとめA2の断裂も疑われた.心不全管理行い僧帽弁修復施行.術中所見では後尖P2断裂を認めた.P2周辺では暗赤色瘢痕組織化がみられ,炎症性病変が疑われた.
【症例2】
在胎41週で仮死なく出生した.遷延性黄疸に対して光線療法を受けた.生後6ヶ月時に咳嗽があり近医受診した際に心雑音指摘された.胸部レントゲンでは心拡大(CTR56%)あり,右側胸水をみとめた.エコーではLVIDd 25mm,左心系の拡大をみとめ,推定右室圧は56mmHgであった.また腱索(A1/P1)断裂による僧帽弁逆流と推定された.心不全管理行い,僧帽弁修復術を施行した.術中所見ではA1/P1/P3の断裂を認めた.
【症例3】
在胎40週で仮死なく出生した.周産期異常なし.生後5ヶ月時に発熱,多呼吸が出現したため近医受診したところ聴診上心雑音指摘された.胸部レントゲンでは心拡大(CTR 54%),肺鬱血所見あり,両側に胸水を認めた.エコーで肺高血圧の所見なし,僧帽弁逆流をみとめた.炎症所見高値に加え右冠動脈拡張も伴っていたため川崎病と診断されガンマグロブリンの投与をうけた.心不全管理行い,僧帽弁修復術施行.術中所見ではP2-P3の断裂を認めた.
【考察】
乳児特発性僧帽弁腱索断裂の3症例を経験した.本疾患は死亡率7%とされ生命予後にもつながることから,上気道症状を伴い急速に増悪するような症例では乳児特発性僧帽弁腱索断裂を念頭に診断に努める必要がある.病因に関しては明らかになっておらず,さらなる検討が必要である.