Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:冠動脈疾患

(S498)

心エコー図による小児の冠動脈内径正常値の検討

Examination of Normal Value of Coronary Diameter in Child by Echocardiography

北洞 久美子1, 奥村 恭己1, 中村 学1, 後藤 孝司1, 安田 英明1, 橋本 智子1, 橋ノ口 由美子1, 澤 幸子1, 井上 真喜1, 中嶋 義記2

Kumiko KITAHORA1, Yasuki OKUMURA1, Manabu NAKAMURA1, Takashi GOTOU1, Hideaki YASUDA1, Satoko HASHIMOTO1, Yumiko HASHINOGUCHI1, Sachiko SAWA1, Maki INOUE1, Yoshiki NAKASHIMA2

1大垣市民病院形態診断室, 2大垣市民病院小児科

1Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Pediatrics, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
川崎病において心エコー図による冠動脈病変の診断には,周辺冠動脈の内径との比較や年齢,体格により拡大性病変の基準を設けて評価されているが,正常計測値の集積が不十分であることなどから十分な信頼性が担保されていない.冠動脈内径の正常値は冠動脈病変の診断において重要であり,小児において正確な冠動脈内径の標準値を知る必要がある.そこで心エコー検査時に比較的容易に計測できる左室拡張末期径(LVDd)を用い,小児における冠動脈内径とLVDdとの関係から,冠動脈内径正常値について検討した.
【対象および方法】
2006年1月〜2012年10月に当院にて冠動脈内径の測定を含む心臓超音波検査を施行した心疾患や冠動脈病変のない小児132名,計360回 (男67名,女65名,0〜17歳:6.2±3.9歳)を対象とした.検査は技師10名にて行った.冠動脈内径の計測方法は,Bモード法を用いて冠動脈の長軸方向を描出し,超音波ビームに対して近位側の冠動脈内膜エコーのtrailing edgeから超音波ビームに対して遠位側のleading edgeまでとした.右冠動脈近位部(Seg1),左主幹部(Seg5),左前下行枝近位部(Seg6),左回旋枝近位部(Seg11)に該当する部位の冠動脈内径を計測した.LVDdはMモード法にて計測し,各冠動脈内径との相関をみた.
【使用機器】
ALOKA社製SSD-5500,6500,α-5,α-7,および東芝社製Xario,5MHzセクタプローブを使用した.
【結果】
Seg1とLVDdの関係はy=0.046x+0.647,R2=0.504,p<0.001,Seg5ではy=0.047x+0.740,R2=0.537,p<0.001,Seg6ではy= 0.042x+0.481,R2=0.454,p<0.001,Seg11ではy=0.039x+0.458,R2 =0.442,p<0.001となり,いずれも良好な正の相関が得られた.
【考察】
各冠動脈内径とLVDdには良好な相関が得られた.しかしSeg1,5に比べてSeg6,11の相関がやや低くなったのは,Seg1と5は明瞭に描出しやすくSeg6,11はそれに比べてやや不明瞭になってしまうからであると思われる.今後この指標を用いて小児の川崎病の急性期における冠動脈の拡大性病変を指摘できるよう,さらに症例数を増やして検討を進めていきたい.
【結語】
左室拡張末期径から算出される冠動脈内径正常値は,小児の冠動脈病変の診断に有用な指標となり得ることが示唆された.