Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:症例Ⅱ

(S496)

ペースメーカリードによる右冠動穿孔,心タンポナーデ,冠動脈仮性瘤を合併した一例

Perforation into right coronary artery with cardiac tamponade and pseudoaneurysm due to migrating pacemaker lead

鵜川 聡子1, 麻植 浩樹2, 杜 徳尚1, 西井 伸洋1, 永瀬 聡1, 草野 研吾1, 伊藤 浩1, 高垣 昌巳3, 佐野 俊二3

Satoko UGAWA1, Hiroki OE2, Norihisa TOH1, Nobuhiro NISHII1, Satoshi NAGASE1, Kengo KUSANO1, Hiroshi ITO1, Masami TAKAGAKI3, Shunji SANO3

1岡山大学循環器内科, 2岡山大学病院超音波診断センター, 3岡山大学心臓血管外科

1Department of Cardiovascular Medicine, Okayama University, 2Center of Ultrasonic Diagnostics, Okayama University Hospital, 3Department of Cardiovascular Surgery, Okayama University

キーワード :

【症例】
76歳男性
【現病歴】
平成24年2月,失神を伴う洞不全症候群に対しペースメーカ植え込み術(DDD)を施行.退院後2日目,歩行時に突然胸痛が出現し持続したため救急搬送された.救急外来到着時,収縮期血圧 50mmHg台のショック状態.経胸壁心エコー図検査(TTE)で心嚢液貯留および左室狭小化を認め,心タンポナーデと診断,ショック状態のため緊急入院となった.
【既往歴】
重症大動脈弁逆流 (無症状のため経過観察されていた),IgA腎症
【入院後の経過】
心電図はペースメーカ心電図(A-pace).胸部レントゲンで心室リードの脱落を認め,心タンポナーデの原因は脱落した心室リードによる心室穿孔を疑った.緊急で透視下に心嚢液ドレナージを施行,血性心嚢液排液あり.続けて心室リードの整復を試みたが,困難であった.右房造影で出血源検索を試みるも,明らかとならず.心嚢液流出は止まらず,血圧維持が困難となり緊急開胸止血術が施行された.術中下壁周辺からの出血を認めるも明らかな出血源が特定できず,タココンブで下壁を圧迫,何とか止血を得た.その後経過は一時安定していたが,術後10日目,TTEで房室間溝に20×20mmの球状構造物を認め,内部への血流が確認され,造影CTでも心臓下壁に接して造影される球状構造物を認めた.臨床経過や構造物の部位,内部へのto and fro様の流入血流波形の存在などから球状構造物はペースメーカリードによる右冠動脈穿孔により生じた冠動脈仮性瘤と診断,増大傾向でもあったため,術後13日目に経皮的冠動脈形成術(PCI)施行,カバードステント3.0×16mmを留置した.PCI後のTTEでは冠動脈瘤は血栓化傾向にあり,内部の血流は消失していた.フォローアップで施行された冠動脈造影検査でも瘤内への血流は認めなかった.今回,ペースメーカ脱落リードによる右冠動脈穿孔のため心タンポナーデをきたし,術後亜急性期に増大傾向を認めた冠動脈仮性瘤の診断に心エコー図が有用であった症例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.