Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:症例Ⅰ

(S494)

心筋梗塞後に心外膜下心室瘤形成を認めるも,心破裂を回避できた二症例

Two cases of subepicardial aneurysm after myocardial infarction

石山 絢野

Ayano ISHIYAMA

大阪労災病院循環器内科

Cardiology, Osakarousai Hospital

キーワード :

症例は脂質異常症で近医で経過観察されていた62歳男性.2011年11月14日,胸部圧迫感を自覚.11月17日症状軽快を認めず,新たに胸部圧迫感を自覚するも自宅にて経過観察され,11月19日再診時心電図上ⅡⅢaVF誘導の異常Q波とⅠaVL誘導のST-T低下を認めた.亜急性期心筋梗塞疑い精査加療目的に同日当院救急搬送.冠動脈造遺影検査の結果,右冠動脈#1 99%(低形成),左前下行枝#6 75%,#7 75%,回旋枝#11 50%,#12 90%,#13 100%との結果であった.回旋枝#13 100%については左前下行枝より良好な側副血行路の発達を認めており,亜急性期心筋梗塞に対し内服加療後,待機的インターベンションの方針となった.心エコー上左室駆出率56%,Dd/Ds 60/45mm,側壁から後壁にかけてのsevere hypokinesisと中隔壁から下壁の基部から中間部にかけてのakinesi sを認めた.また,下壁側中間部に心外膜下心室瘤形成を認め,その90%は中隔側に面していた.心室中隔穿孔を疑うシャント血流は認めなかった.心室中隔穿孔,左室自由壁破裂の恐れがあるため,エコー上のshunt flowの出現・聴診の変化の有無に注意しつつ安静・降圧にて慎重に経過観察の方針となるも,2週間後の心エコー再検時には21×19mm大の心外膜下心室瘤の50%は中隔側に面し,自由壁側に拡大傾向を認めていた.当院心臓血管外科に手術適応につきコンサルトもリスク対効果の面より現時点では適応なしとの判断にて保存的加療の方針となった.入院中施行したcoronary CT-angiographyでは下壁中間部の心筋脱落を認め,心室中隔側が最も菲薄化しているものの明らかな心筋断裂は認めなかった.また,インターベンション1ヶ月後の左室造影検査では瘤の拡大傾向や瘤内の血栓は認めず,入院経過良好につき12月20日当科退院となった.2012年1月運動負荷心筋シンチグラフィーの結果,下後壁基部から中間部にかけての高度viability低下,瘢痕化を認め残存虚血は認めなかったため,左前下行枝残存狭窄については内服加療の方針となった.症例二は,1995年発症の陳旧性心筋梗塞既往の73歳男性.2011年4月18日,狭心症に対する冠動脈造影検査にて左前下行枝#7に造影遅延を伴う99%狭窄を認め,#6,#7にインターベンションを施行し薬剤溶出性ステントを留置した.右冠動脈・回旋枝に残存狭窄があったが,心筋シンチグラフィーにて左室後壁の高度viability低下認めており,同部の残存虚血は軽度との結果であり,経過観察となった.心エコー上左室駆出率56%,Dd/Ds 60/45mm,下壁基部から中間部にかけsevere hypokinesisを呈していたが,壁の菲薄化傾向は認めなかった.2012年10月インターベンション6ヶ月後の冠動脈造影検査にて右冠動脈遠位部#3 75%,回旋枝開口部#11 90%と残存狭窄の進行を認めており,ドブタミン負荷心エコー検査を施行する方針となった.この際,エコーの詳細な観察にて陳旧性心筋梗塞部位左室下壁中間部のdiskinesisと同部位の心筋脱落を認め,心外膜下心室瘤形成が疑われた.上記二症例とも心筋梗塞後心エコーにて経過観察中に心破裂前に発見され,現在治療方針につき検討中であるが,若干の文献的考察を加え報告する.