Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:収縮性心膜炎・他

(S489)

維持透析患者における心エコー図検査の意義‐単一透析施設での検討

Impact of Echocardiography in Patients Undergoing Regular Hemodialysis- Experience in a Single Dialysis Center

竹田 昌希1, 田邊 一明1, 姫野 安敏2

Masaki TAKEDA1, Kazuaki TANABE1, Yasutoshi HIMENO2

1島根大学医学部循環器内科, 2姫野クリニック泌尿器科

1Cardiology, Shimane University Faculty of Medicine, 2Urology, Himeno Clinic

キーワード :

【目的】
慢性透析患者の死因の約半数は心血管死であり,透析患者の合併症管理において,心血管障害への対策は重要な課題である.また,透析患者では透析導入時にすでに約30%の患者でうっ血性心不全を合併しており,腎不全により容易に体液過剰となることから,心臓性,非心臓性循環不全を評価することが必要となる.本研究では維持透析患者における透析中あるいは透析前後の心エコー図検査の果たす役割について検討することである.
【対象・方法】
対象は単一施設において2010年1月から2012年9月までに心エコー図検査を施行した維持血液透析患者88例(男性64例,37〜89歳,平均66.9歳)である.心エコー図検査が複数回行われた症例もあり,計130回の心エコー図検査を解析した.心エコー図検査は透析前(n=23),透析中(n=47),透析直後(n=50),また透析翌日(n=10)に行った.心エコー図検査は通常の指標に加え,至適なdry weight (DW)設定目的で下大静脈径(IVC)および呼吸性変動,左室流入血流速度波形,組織ドプラ法による拡張期僧帽弁輪速度,三尖弁逆流速度から圧較差を計測し評価した.
【結果】
透析中あるいは直後に収縮期血圧が100mmHgを切る低血圧を31例に認め,その中で20例はIVCの虚脱から過度の除水,設定されていたDWが低いと判断した.また10例に左室内腔狭小化に伴う平均16.4mmHgの左室内圧較差が認められた.1例には大量の心嚢液貯留が認められ,透析中に心タンポナーデと診断した.一方で,18例においてはDW設定が高いと判断し,DW設定を下げることにより至適なDW設定を行った.8例には左室壁運動異常から虚血性心疾患を疑い,冠動脈評価にて5例が虚血性心疾患と診断され,2例には冠動脈カテーテルインターベンションが施行された.10例には中等症から重症の弁膜症が認められ(僧帽弁狭窄症4例,大動脈弁狭窄症4例,大動脈弁逆流1例,僧帽弁逸脱1例),その中で2例には弁置換術が行われた.4例は心筋症(拡張型心筋症1例,肥大型心筋症2例,心アミロイドーシス1例)と診断した.
【結語】
維持透析患者において,心エコー図検査は至適な体液管理において重要な情報を提供し,また合併する心血管疾患の治療に介入する機会を与え,イベント発生回避に寄与することが期待される.