Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:収縮性心膜炎・他

(S487)

連続波ドプラ法による肺動脈弁逆流速度波形の分析に基づく収縮性心膜炎の診断

Diagnosis of constrictive paricarditis based on the analysis of continuous-wave Doppler derived pulmonary regurgitant velocity profile

加賀 早苗1, 三神 大世1, 高松 由佳2, 中鉢 雅大3, 横山 しのぶ3, 西野 久雄3, 西田 睦3, 岩野 弘幸4, 山田 聡4, 筒井 裕之4

Sanae KAGA1, Taisei MIKAMI1, Yuka TAKAMATSU2, Masahiro NAKABACHI3, Shinobu YOKOYAMA3, Hisao NISHINO3, Mutsumi NISHIDA3, Hiroyuki IWANO4, Satoshi YAMADA4, Hiroyuki TSUTSUI4

1北海道大学大学院保健科学研究院, 2北海道大学大学院保健科学院, 3北海道大学病院検査・輸血部, 4北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学

1Faculty of Health Sciences, Hokkaido University, 2Division of Health Sciences, Hokkaido University Graduate School of Health Sciences, 3Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 4Department of Cardiovascular Medicine, Hokkaido University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
収縮性心膜炎(CP)の血行動態を反映する心エコー所見は多数報告されているが,その個々の診断精度はいずれも十分高いとは言えない.また,その多くは,最近は省略されがちなMモード法や多心拍の入念なドプラ記録を必要とするため,日常の検査では見落とされる可能性がある.連続波ドプラ法による肺動脈弁逆流(PR)血流速度波形は,肺動脈拡張期圧推定のために日常的に記録する価値がある.そこで,PR流速波形の分析がCPの心エコー診断に有用か否かを検討した.
【方法】
対象は,2005年から2012年に北大病院心エコー検査室でCPと診断され,明瞭なPR流速波形の連続波ドプラ記録が残されていた洞調律例20例(CP群)である.CPは,断層法による①心膜肥厚,②下大静脈の拡大,Mモード法による③心室中隔の拡張早期notch,④左室後壁の拡張期plateau,⑤心室中隔の吸気時左室側移動,パルスドプラ法による⑥経僧帽弁血流の呼吸性変動増大,⑦経三尖弁血流の呼吸性変動増大のうち3個以上を満足したものとした.健常例20例(N群)を対照とした.また,経僧帽弁血流速波形がE/A>1.5,DT<160msec,IRT<70msecと拘束型波形を呈した心筋疾患例20例(MD群)も検討に加えた.浅呼気位のPR流速波形から,拡張早期最大流速(Vmax)とその減速時間(PRDT)を計測した.また,拡張早期の流速下降途中の変曲点の有無を評価し,これがあるものについては拡張早期変曲点流速(Vflx)を計測した.さらに,拡張後期から末期までの間の拡張後期最小流速(Vmin)を計測し,Vflx/VmaxとVmin/Vmaxを算出した.
【結果】
PR Vmax,PRDTおよびVflxはCP群でMD群より有意に小であったが,N群との間に有意差を認めなかった.Vflx/VmaxはCP群でN群とMD群より有意に小であった.VminおよびVmin/VmaxはCP群でN群とMD群より有意に小,N群でMD群より有意に小であった.PR流速下降途中の変曲点がみられた頻度はN群(7例,35%)およびMD群(5例,25%)よりCP群(16例,80%)で有意に多かった.Vmin<50cm/sの例は,N群(0例,0%)およびMD群(0例,0%)よりCP群(15例,75%)で有意に多く,Vmin/Vmax<0.3の例は,N群(1例,5%)およびMD群(0例,0%)よりCP群(16例,80%)で有意に高頻度であった.
【考案】
本研究のようにPR流速波形分析のCP診断への有用性を示した報告は,これまでほとんどなく,我々の知る限りGilmanら(J Am Soc Echocardiogr 2005; 18: 892-5)の研究をみるのみである.彼らは,吸気時の拡張期半ばでのPR血流中断がCPの診断に有用であると報告した.しかし,血流中断の定義がやや曖昧であり,定量的分析は行われておらず,PR流速波形の診断的意義を十分明らかにしていない.我々は,PR流速波形を定量的に分析した結果,CP例には,拡張早期減速時間の短縮,その後の変曲点の存在とその流速低値,拡張後期の流速低値などいくつかの特徴があることがわかった.中でも拡張後期最少流速Vminやその拡張早期最大流速との比Vmin/Vmaxの低値は,鋭敏かつ正確にCPを診断できる指標であることが示された.
【結論】
連続波ドプラ法によるPR流速波形の分析はルーチン検査におけるCPの発見に寄与し,とくに拡張後期の流速やその拡張早期流速との比の低値はCPの正確な診断に寄与すると考えられた.