Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:薬物治療

(S486)

左室駆出率低下例においてβ遮断薬が左室収縮能と心拍数に与える影響の検討

Effects of Beta-Blocker on Left Ventricular Ejection Fraction and Heart Rate in Patients with Left Ventricular Systolic Dysfunction

大星 真貴子, 合田 亜希子, 正木 充, 中坊 亜由美, 藤原 昌平, 福井 美保, 菅原 政貴, 廣谷 信一, 増山 理

Makiko OBOSHI, Akiko GODA, Mitsuru MASAKI, Ayumi NAKABO, Shohei FUJIWARA, Miho FUKUI, Masataka SUGAHARA, Shinichi HIROTANI, Tohru MASUYAMA

兵庫医科大学循環器内科学

Department of Internal Medicine, Cardiovascular Division, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【背景】
慢性心不全患者において,心拍数(HR)は死亡率や心血管イベント発症率と関連する.β遮断薬はHRを低下し,左室のリモデリングを改善させる.また,左室収縮能の改善とHRの低下とに関連があることが報告されている.しかし,慢性心不全患者の心機能改善とHR低下にβ遮断薬がどのように影響しているかは解明されていない.
【目的】
左室駆出率(EF)低下例においてβ遮断薬が左室収縮能とHRに与える影響について検討する.
【方法】
対象は2008年7月から2009年6月に当院にて心エコー図検査を施行した5231例.このうち,EFが40%以下の症例で,1から1.5年後にフォローアップ(f/u)心エコー図検査を施行した104例について検討した.頻脈誘発性心筋症,慢性心房細動,急性冠症候群,弁膜症手術症例は除外した.①f/u心エコー図検査時に,β遮断薬を低用量(カルベジロール<10mg,ビソプロロール<2.5mg)内服していた25例(低用量群),中用量(カルベジロール ≥ 10mg, <20mg ,ビソプロロール ≥ 2.5mg, <5mg)内服していた37例(中用量群),高用量(カルベジロール ≥ 20mg,ビソプロロール ≥ 5mg)内服していた42例(高用量群)に分類し,EFとHRとの関連を検討した.②観察期間中に,β遮断薬を導入した20例(導入群),増量した28例(増量群),不変であった56例(不変群)に分類し,EFとHRとの関連を検討した.
【結果】
①高用量群においてEFは有意に改善していた(38±13 vs 29±7 %, p<0.001).低用量群と中用量群ではEFの改善を認めなかった.3群すべてでEF改善度(ΔEF)とHRの低下度(ΔHR)に有意な相関を認めた(低用量群:r=−0.66, p<0.001, 中用量群:r=-0.45, p<0.01, 高用量群:r=-0.42, p<0.01).②導入群と増量群においてEFは有意に改善し(40±15 vs 31±7 %, p=0.03, 40±12 vs 31±8 %, p<0.001),それぞれΔEFとΔHRに有意な相関を認めた(r=-0.48, p=0.03, r=-0.57, p=0.001).多変量解析の結果,ΔEFに寄与する因子として,ΔHRのみが選択された.
【結論】
β遮断薬治療は,新規導入だけでなく,その後の増量によって心機能の改善を認め,その改善はHR低下と関連していた.また,β遮断薬を高用量まで増量することは,低・中用量と比べて心機能の改善につながることが示唆された.