Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:心筋症

(S482)

肥大型心筋症症例における左室流出路圧較差と僧帽弁弁尖長との関連

Relationship between mitral valve leaflet length and left ventricle outflow tract pressure gradient in hypertrophic cardiomyopathy

奈良 育美, 飯野 貴子, 渡邊 博之, 伊藤 宏

Ikumi NARA, Takako IINO, Hiroyuki WATANABE, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

Department of cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
肥大型心筋症症例での左室流出路圧較差の発生メカニズムに関しては,複数の因子が関与していることが知られている.また,肥大型心筋症の中でも僧帽弁異常前方運動がみられる症例において,僧帽弁前尖,後尖の弁尖長が長いことが報告されている.しかしながら,僧帽弁弁尖長と左室流出路圧較差の関連についての詳細な検討はこれまでになされていない.
【目的】
肥大型心筋症症例において,左室流出路圧較差と僧帽弁弁尖長との関連性を検討する.
【対象および方法】
2009年12月〜2012年11月に当院で臨床的に肥大型心筋症と診断された33症例(年齢61±17歳,男性17例)を対象とした.心房細動合併例は除外した.初診時の心臓超音波検査により求めた左室流出路圧較差が30mmHg以上の症例を閉塞性肥大型心筋症(HOCM)群,圧較差が30mmHg未満の症例を非閉塞性肥大型心筋症(HNCM)群とした.2群間で,僧帽弁前尖長(AML length)及び僧帽弁後尖長(PML length)を含む超音波所見について比較検討した.AML length及びPML lengthは傍胸骨左室長軸像で拡張末期の時相で計測した.
【結果】
2群間で,左室駆出率(HOCM群;73.1±7.4 vs HNCM群;69.1±10.5%, p=0.27),左室拡張末期径(HOCM群;43.8±5.5 vs HNCM群;46.6±5.9 mm, p=0.20),左室収縮末期径(LVDs)(HOCM群;25.3±4.5 vs HNCM群;27.7±6.9 mm, p=0.31),左房径(HOCM群;43.0±5.5 vs HNCM群;43.2±6.5 mm, p=0.92),心室中隔厚(HOCM群;18.4±3.4 vs HNCM群;16.7±5.6 mm, p=0.35)及び後壁厚(HOCM群;12.0±2.2 vs HNCM群;11.6±2.3 mm, p=0.64)に有意差を認めなかった.左室流出路圧較差はHOCM群で有意に高かった(HOCM群;76.0±51.6 vs HNCM群;9.4±6.8 mmHg, P<0.05).僧帽弁弁尖長に関して検討したところ,AML lengthはHNCM群に比較してHOCM群で有意に長かった(HOCM群;26.2±6.1 vs HNCM群;21.6±5.4 mm, P=0.03).さらに,AML length/LVDs比を算出したところ,HNCM群に比較してHOCM群で有意に大きかった(HOCM群;1.09±0.4 vs HNCM群;0.81±0.3, P=0.02).PML length,PML length/LVDs比は両群間で有意差を認めなかった.多変量解析により,左室流出路圧較差に影響を与える因子について検討したところ,AML length/LVDs比のみが左室流出路圧較差を有意に増大させる独立した危険因子であった.
【考察】
今回の検討では,AML length及びAML length/LVDs比がHOCM群で有意に大きかった.これまで,肥大型心筋症症例において病理組織学的に僧帽弁弁尖の変性がみられ,健常例に比して僧帽弁弁尖が長く,厚いことが報告されている.HOCM群では,左室流出路における圧較差に伴い,HNCM群に比較してより僧帽弁弁尖の変性が大きくなり,特に僧帽弁前尖長が長くなった可能性が考えられた.
【結論】
肥大型心筋症症例のなかでもHOCM群において,HNCM群に比してAML length が長かった.AML length/LVDs比は左室流出路圧較差を増大させる独立した危険因子であった.