Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:感染症心内膜炎

(S479)

緊急手術を要した巨大僧帽弁瘤穿孔を伴う感染性心内膜炎の一例

Successful Surgical Intervention for Infective Endocarditis with Ruptured Giant Mitral Valve Aneurysm: A Case Report

辻本 悟史, 宮坂 陽子, 諏訪 惠信, 前羽 宏史, 塩島 一朗

Satoshi TSUJIMOTO, Yoko MIYASAKA, Yoshinobu SUWA, Hirofumi MAEBA, Ichiro SHIOJIMA

関西医科大学第二内科

Department of Medicine Ⅱ, Kansai Medical University

キーワード :

【はじめに】
僧帽弁瘤は主に大動脈弁位感染性心内膜炎に合併する事が多いとされるが,その合併頻度は比較的稀である.また弁瘤穿孔により心不全の急激な悪化に陥ることもあり注意が必要とされる.今回我々は巨大僧帽弁瘤穿孔を伴い緊急手術を要した感染性心内膜炎の一例を経験したので報告する.
【症例】
78歳男性.約2ヶ月前から腰痛が出現し,他院で化膿性脊椎炎の診断で加療されるも改善せず,精査加療目的で当院整形外科に転院となった.転院後より起因菌の精査と抗生剤治療が継続されたが,翌日に呼吸困難の増悪を認め循環器内科に診察依頼となった.その際に施行した経胸壁心エコーにて,大動脈弁左冠尖に可動性を有するφ16×6mmの疣腫と左冠尖の穿孔及び偏位した大動脈弁逆流を認め,僧帽弁前尖には左房への穿孔を伴う巨大僧帽弁瘤を認めた.以上から,化膿性脊椎炎を伴う感染性心内膜炎と診断.また両弁に著しい弁破壊を伴い,進行性の心不全から血行動態の悪化を認めることより緊急で外科的治療 (両弁置換術) を施行した.術後の経過は良好で心機能も改善したが,腰痛によるADL低下のリハビリ目的で,第92病日に他院へ転院となった.
【考察】
感染性心内膜炎に合併する僧帽弁瘤は,偏位した大動脈弁の逆流ジェットが僧帽弁の脆弱部位を障害する事で形成されることが多いとされる.弁瘤穿孔や瘤のサイズが大きい場合には外科的治療を考慮する必要があるが,サイズが小さくても瘤穿孔を合併した際に血行動態の急激な悪化を来す場合があり注意が必要である.今回詳細な経胸壁心エコーにて早急に診断し得たことから適切に外科的治療を選択でき,術後良好な経過が得られた.感染性心内膜炎を疑った場合の心エコー検査時は,弁瘤穿孔を含めた詳細な評価が治療選択に重要である.