Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:感染症心内膜炎

(S479)

興味ある心エコー所見を呈した僧帽弁瘤の2症例

Interesting findings of Echocardiography in 2 cases of MItral valve aneurysm

南 貴子1, 恒任 章1, 河野 浩章1, 坂口 能理子5, 古島 早苗5, 川浪 のぞみ5, 吉住 敏男2, 古殿 真之介3, 山近 史郎4, 前村 浩二1

Takako MINAMI1, Akira TSUNETO1, Hiroaki KAWANO1, Noriko SAKAGUTCHI5, Sanae KOJIMA5, Nozomi KAWANAMI5, Toshio YOSHIZUMI2, Shin’nosuke FURUDONO3, Shiro YAMACHIKA4, Kouji MAEMURA1

1長崎大学病院循環器内科, 2長崎大学病院超音波センター, 3長崎県島原病院循環器内科, 4春回会井上病院循環器内科, 5長崎大学病院検査部

1Cardiovascular Medicine, Nagasaki University Hospital, 2Ultrasound Diagnostic Center, Nagasaki University Hospital, 3Cardiology, Nagasaki Prefecture Shimabara Hospital, 4Cardiology, Shunkaikai Inoue Hospital, 5Central Diagnostics Laboratory, Nagasaki University Hospital

キーワード :

【症例1】
61才男性
《主訴》発熱
《現病歴》2007年に中等度の大動脈弁閉鎖不全症ARを指摘,2011年4月歯肉傷害後より38℃前後の発熱あり,近医で抗菌薬無効,5月前医でCRP11.6と高値,TEE等で熱源精査するも不明にて入院,Streptococcus sangiusが血液培養で検出,CRPは陰性化せず,6月TEE再検して僧帽弁前尖A2左房側に袋状構造物を認め疣腫が疑われ当院紹介
《理学所見》体温35.5℃,拡張期心雑音聴取
《検査所見》胸部X線:CTR45%,心電図:洞調律,血液検査:WBC6200,Hgb10.6,CRP1.39
《TEE》大動脈弁の右冠尖の逸脱と中等度AR,無冠尖に6mmの紐状構造物あり,僧帽弁はARジェットのあたる前尖A2に高輝度部分があり,この左房側に直径1cm大の袋状の弁瘤と内部に血流を認めた
《経過》抗菌薬投与してCRP改善なく,7月心臓血管外科にて大動脈弁位機械弁置換と僧帽弁形成術を施行した.
【症例2】
86才女性 《主訴》発熱 《現病歴》これまで心雑音の指摘なく,心エコー検査を受けたことはなかった.2012年8月に抜歯,9月より38℃前後の発熱,10月初旬より労作時息切れが出現,うっ血性心不全の診断で前医入院,心エコーで僧帽弁に疣腫が疑われた.炎症反応は軽度,血液培養陰性であったが,精査目的で当院紹介 《理学所見》体温35.9℃,収縮期心雑音聴取 《検査所見》胸部X線:CTR60%,心電図:洞調律,血液検査:WBC5100,Hgb9.6,CRP4.54 《TEE》僧帽弁後尖P3の部位から心周期にあわせて左房側に突出して広がったり閉じたりする20mm×15mmの袋状の弁瘤を認め,収縮期には瘤の穿孔部位から左房内に中等度〜高度の逆流ジェットが噴き出ていた 《経過》抗菌薬投与してCRPは1.0未満に低下,心不全の再燃なく,手術は行わない方針となった 
【まとめ】
感染性心内膜炎の時にみられる弁瘤の発生部位は僧帽弁が圧倒的に多く,炎症によって脆弱となった弁の一部が左室圧の影響で膨隆することにより形成される.弁瘤がさらに進行して弁穿孔が形成されるといわれ,血行動態的に重篤な弁逆流をきたし,急性左心不全をきたす原因となる.今回我々はARジェットによって生じたと考えられる前尖の弁瘤【症例1】と,当科で経験した最大のサイズの後尖の弁瘤【症例2】を,TEE,3D-TEEで詳しく観察できたたので報告する.