数野 直美¹, 松村 誠², 三村 優子¹, 山本 哲也¹, 三原 千博¹, 岡原 千鶴¹

Naomi KAZUNO¹, Makoto MATUMURA², Yuuko MIMURA¹, Tetuya YAMAMOTO¹, Chihiro MIHARA¹, Chiduru OKAHARA¹

¹埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, ²埼玉医科大学国際医療センター心臓内科

¹Clinical Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, ²Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center

キーワード :

【目的】
左室壁運動異常領域における心筋2Dストレイン解析において超音波診断装置の機種によって計測値に差が生じるか否かについて検討した．
【方法】
対象はルーチンの心エコー検査時，2機種の超音波診断装置で左室の心筋ストレイン解析を実施し得た29例．疾患の内訳は虚血性心疾患8例，心筋症13例，その他（腫瘍，弁膜症，不整脈）17例．壁運動正常14例 （LVEF67±7％），異常15例（LVEF33±16％）で壁運動正常総分画数（中部短軸114分画，4CV 100分画），異常総分画数（中部短軸60分画，4CV 64分画）．使用装置はGE Vivid7（装置G）と東芝 Aplio ARTIDA（装置T）．左室中部レベル短軸像においてRadial strain（RS）とCricumferential strain（CS），心尖部四腔像にてLongitudinal strain（LS）を各分画ごとに計測し，装置間で比較した．
【結果】
1）グローバルStrain値の装置間比較壁運動正常例では装置Gと装置TにおけるRSの平均値，CSとLSのグローバル値は各々，52％vs32％，-24％vs-14％，-20％vs-13％であり，いずれも装置Gにおいて高値を示した．両装置間の誤差はRS 20±13％，CS 10±7％，LS 7％±8％であった．壁運動異常例ではRSの平均値（23％vs19％）には両装置間で有意な差は認められなかった．一方，CSとLSのグローバル値は各々-10％vs-7％，-15％vs-8％であり，壁運動正常例と同様に装置Gで高値を示した．両装置間の誤差はRS 3±13％，CS 2±3％，LS 6％±8％であった．
2）各分画におけるStrain値の装置間比較壁運動正常分画では装置Gと装置TによるRS（49±17％vs32±17％），CS （-23±9vs-14±6％），LS （-20±5％vs-13±5％）はいずれも装置Gに高く，両装置間の誤差はRS 17±21％，CS 9±10％，LS 7±5％であった．異常分画ではRS（13±13％vs12±10％）は装置間で差がなく，CS（-8±6％vs-6±4％）とLS（-10±5％vs-6±4％）は装置Gで高値を示した．両装置間の誤差はRS 2±12％，CS 2±5％，LS 4±3％であり，壁運動正常分画に比し異常分画において低値を示した．
【結語】
現時点では，心筋2Dストレイン値は壁運動正常例あるいは分画では超音波診断装置の機種により大きな差を生じる可能性はあるが，壁運動異常例（心筋症，心筋梗塞例など）あるいは分画においては，装置間誤差は小さく，RSは同等である．