黒沢 幸嗣, 根岸 一明, 増田 くに子, 小保方 優, 北條 義明, 中島 正博, 舘野 利絵子, 倉林 正彦

Koji KUROSAWA, Kazuaki NEGISHI, Kuniko MASUDA, Masaru OBOKATA, Yoshiaki HOUJOU, Masahiro NAKAJIMA, Rieko TATENO, Masahiko KURABAYASHI

群馬大学医学部附属病院循環器内科

Department of Medicine and Biological Science, Gunma University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
左心耳の血流速度 （Left Atrial Appendage Flow Velocity; LAAFV）とCHA₂DS₂-VASc scoreは心房細動患者の塞栓リスクの評価に有用だとする報告がある．一方，2D speckle tracking法による左房のストレイン （Left Atrial strain; LAs） は新たな左房機能の評価法として注目されている．しかしLAsと塞栓のリスク層別化の関係については明らかではなく，今回CHA₂DS₂-VASc scoreとLAAFVとLAsの関係を検討した．
【方法】
2011年8月〜2012年12月に左心耳内血栓評価目的に経食道心エコー図検査を受けた連続81例を対象とした（年齢：66±13歳，男性：58例）．中等度以上の弁膜症患者は除外した．LAsは経胸壁心エコー図検査の心尖四腔像と心尖二腔像を用いてspeckle trackingを行い長軸方向のstrainを定量評価し，各segmentの平均値を使用した．
【結果】
画像不良でspeckle trackingできなかった4例を除いた77例を解析した．洞調律患者が45例 （58％），上室性不整脈患者が32例 （42％）であった．LAs （21.2±9.6％）とLAAFV （48±30 cm/s）はCHA₂DS₂-VASc score （2.5±1.6）と有意に相関した （r=0.428, p＜0.001; r=0.316, p=0.004）．LAAFVと性別で補正後も，年齢とLAsはCHA₂DS₂-VASc scoreと有意に相関した （β=0.57, p＜0.001, β= -0.29, p=0.001）が，LAAFVは有意ではなかった （p=0.081）．またCHA₂DS₂-VASc scoreの因子では年齢 （β=-0.21, p=0.037）と心不全の既往 （β=-0.47, p＜0.001）がLAsの独立した予測因子だった．
【結論】
LAsとLAAFVがCHA₂DS₂-VASc scoreと相関したが，LAsのみが独立して相関した．年齢と心不全の既往がLAsとCHA₂DS₂-VASc scoreに共通する塞栓症リスク因子であると示唆された．