Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:経食道心エコー

(S470)

誘因なく発症し,経食道エコーが診断に有用であったコレステロール結晶塞栓症の2症例

Two case of spontaneous renal cholesterol crystal embolism assessed by transesophageal echocardiography

網屋 俊, 福岡 嘉弘, 矢野 弘樹, 鉾之原 基, 前田 拓郎, 最勝寺 晶子, 呉 建, 福元 まゆみ, 濱田 富士夫, 青崎 眞一郎

Shun AMIYA, Yoshihiro FUKUOKA, Hiroki YANO, Motoshi HOKONOHARA, Takuro MAEDA, Akiko SAISHOZI, Takeshi KURE, Mayumi FUKUMOTO, Fuzio HAMADA, Shinichiro AOSAKI

恩賜財団済生会川内病院内科

Internal Medicine, Saiseikai Sendai Hospital

キーワード :

【症例1.】
68才男性.高血圧,高尿酸血症を治療中であった.平成24年4月中旬,突然の左背部痛,腹満感を自覚した.3日後,当科受診し,CRP23.5mg/dlと強い炎症所見があり,CTで左腎臓に梗塞像を認めた.心原性塞栓を想定し,抗菌剤,ヘパリン持続静注を開始した.しかし,翌日の経食道心エコーで心腔内に血栓像を認めず,下行大動脈に最大15mm肥厚の表面不整な一部可動性のあるプラークを認め,モニターやホルターECGで心房細動を認めなかった.コレステロール結晶塞栓症による腎梗塞と診断し,ヘパリン中止,補液,プロスタグランジン注射,アトルバスタチン10mgを開始した.好酸球増加や腹腔内塞栓,Blue toe syndromeは起こらず順調に炎症は改善し,第12病日に退院した.
【症例2.】
79才男性.高血圧,脂質異常症,腹部大動脈瘤,COPDを治療中であった.Crが5年かけて1.0から2.0mg/dlへ漸増していたが原因不明で,自然経過と考えられていた.平成24年6月下旬,急に吐き気,心窩部痛を自覚し,約2週間つづいた.7月中旬定期受診で,BUN78mg/dl,Cr6.1mg/dlへ急激に腎機能悪化し,好酸球26%に上昇し,足趾に紫斑ありBlue toe syndromeを呈していた.単純CTで右腎,腸管膜の脂肪濃度やや上昇,下行大動脈に石灰化のない肥厚したプラークがあり,MRAで左腎動脈起始部に塞栓像を認めた.コレステロール塞栓症と診断し,補液,プロスタグランジン注射,バイアスピリン,アトルバスタチン5→10mg/日へ増量した.PSL60mg/日を開始し,好酸球が速やかに陰性化したため退院時には10mgまで減量した.経食道心エコーで心腔内に血栓像がなく,下行大動脈に最大12mm肥厚し,潰瘍を伴う可動性のある複合プラークを指摘し,塞栓源と考えた.下肢皮膚生検でコレステロール血栓像は採取できず.収縮期血圧も170-200mmHgに上がり難治性であった.腎梗塞の90%以上は心原性であり,抗凝固療法が選択されることが多い.しかしコレステロール塞栓症は,カテーテル操作や抗凝固薬で誘発されることがあるため,早期に確実に鑑別する必要があり,経食道心エコーが有用な2症例であった.3D-TEEの有用性も報告されており,今後の積極的な活用が期待される.強力なLDL-C低下療法でプラーク退縮が得られる可能性もあり,注意深く観察予定である.