渥美 安紀子, 石津 智子, 瀬尾 由広, 青沼 和隆, START investigators

Akiko ATSUMI, Tomoko ISHIZU, Yoshihiro SEO, Kazutaka AONUMA, START investigators

筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科

Cardiovascular Division, Faculty of Medicine, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
心臓再同期療法（CRT）の効果予測において，右室機能評価の有用性は未だ明らかでない．
【目的】
CRT施行前の右室機能評価が，CRT反応例を予測するのに有用であるか検討すること．
【方法】
前向き多施設共同研究（the Speckle Tracking imaging for the Assessment of cardiac Resynchronization Therapy study: START）から，右室機能解析が可能であった71例（68±12歳，68％男性）で検討を行った．右室機能はTricuspid annular plane systolic excursion （TAPSE），fractional area change （FAC），右室myocardial performance index （RV-MPI）を評価した．それに加え，従来の指標である心電図QRS幅，および本研究においてCRT効果予測に有用であった左室circumferential strainの標準偏差（CSSD）も併せて評価した．6か月後の左室収縮末期容量が15％以上減少した患者をCRT反応群と定義した．
【結果】
71例中41例（58％）がCRT反応群であった．反応群ではRV-MPIが有意に低値（0.42 vs. 0.70, p=0.008），CSSDが有意に高値（148.8 vs. 111.2ms, p=0.002）であった．QRS幅，その他の右室機能指標では反応群と非反応群で差はみられなかった．ROC解析ではRV-MPIがカットオフ値を0.61とすると，感度92％，特異度41％で反応群を予測できた．CSSDはカットオフ値120msとすると，感度80％，特異度63％で反応群を予測できた．一方QRS幅はカットオフ値152msで感度66％，特異度50％で，反応群予測に有用な指標となりえなかった．その他の指標でも反応群の予測に有用なものはなかった．QRS幅，CSSD，RV-MPIを用いた反応例予測におけるχ2乗値は，これらの項目を組み合わせることにより，有意に高値となった．（図）
【結論】
CRT反応例予測の際，右室機能評価が，従来から行われている心電図QRS幅や左室dyssynchrony評価に対して付加的価値を有する可能性が示唆された．