Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能

(S464)

拡張早期左室流入血流伝播速度は運動耐容能を規定する

Propagation Velocity of Early Diastolic Filling Flow Reflects Exercise Capacity

菊池 祥平, 池原 典之, 後藤 利彦, 若見 和明, 福田 英克, 大手 信之

Shohei KIKUCHI, Noriyuki IKEHARA, Toshihiko GOTO, Kazuaki WAKAMI, Hidekatsu FUKUTA, Nobuyuki OHTE

名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学

Department of Cardio-Renal Medicine and Hypertension, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences

キーワード :

【目的】
拡張早期左室流入血流伝播速度(Vp)は左室弛緩能の臨床的指標とされているが,左室収縮能あるいは左室elastic recoilにも大きく依存して決まる.加えて拡張早期左室流入の良否を数値化した指標でもある.運動耐容能の視点からVpの臨床的意義を,心エコードプラ法で得られる他の諸指標,特に左室弛緩の非観血的指標である拡張早期僧帽弁輪移動速度(e’)と比較して検証した.
【対象】
胸痛精査目的に心エコードプラ検査と心肺運動負荷試験を連続して実施した59名.
【方法】
安静時に心エコードップラー法にて左室駆出率(EF),僧帽弁口血流速波形の拡張早期波(E)・心房収縮期波(A)を,組織ドップラー法によりe’,カラードップラー法にて拡張早期のVpを計測した.引き続き行われた心肺運動負荷試験(15 watts 漸増負荷Ramp法)にて呼気ガス分析により最大酸素摂取量(pVO2)を測定した.
【結果】
EF,A,E/A,E/e’,E/VpのそれぞれとpVO2の間には統計学的に有意であるが比較的疎な相関関係が認められた(r=0.35, p<0.007; r=-0.31, p<0.015; r=0.39, p=0.002; r=-0.50, p<0.0001; r=-0.38, p=0.003).一方,e’とpVO2,VpとpVO2の間には,それぞれ有意でかつより密な正相関関係が認められた(r=0.63, p<0.0001; r=0.60, p<0.0001).pVO2を独立変数とする重回帰分析において年齢,e’とVpのそれぞれが独立変数として選択されたが(重相関係数R=0.73, p=0.004),標準化偏回帰係数はVp(β=0.44, p=0.001)においてe’(β=0.23, p=0.009)よりも高値であった.年齢とe’の間には有意な相関がみられたが(r=-0.42, p=0.001),年齢とVpの間には有意な相関が認められなかった(r=-0.06, p=0.66).加えてVpとEFとの間に有意な正相関を認められた(r=0.51, p<0.0001).
【結論】
Vpは年齢,e’とともに運動耐容能を規定する指標であるが,年齢の影響を考慮した際にはe’よりも良好に患者の運動耐容能を予測しうる.この結果は,良好な収縮能を有する左室では,elastic recoilによる良好な拡張早期流入が存在し,それが運動耐容能と密接に関係することを示唆する.左室拡張能ばかりではなく収縮能も運動耐容能に密接に関係する.