Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:血管Ⅱ

(S458)

頸動脈内膜中膜複合体厚(intima-media thickness) と鉄過剰

The association between subclinical atherosclerosis and ferritin

水野 由子1, 山崎 力1, 興梠 貴英2, 飯室 聡2, 小出 大介3, 小室 一成2

Yoshiko MIZUNO1, Tsutomu YAMAZAKI1, Takahide KOHRO2, Satoshi IIMURO2, Daisuke KOIDE3, Issei KOMURO2

1東京大学医学部附属病院循環器内科・検診部, 2東京大学医学部附属病院循環器内科, 3東京大学大学院医学系研究科臨床疫学システム

1Department of Cardiovascular Medicine, The University of Tokyo, 2Department of Cardiovascular Medicine, The University of Tokyo, 3Department of Clinical Epidemiology & Systems, The University of Tokyo

キーワード :

【目的】
頚動脈超音波検査による頚動脈狭窄の有無及びIMT(内膜中膜複合体厚)の測定,CAVI(Cardio Ankle Vascular Index:心臓足首血管指数)による血管年齢など,早期動脈硬化に関する指標は,将来の心血管疾患を予測する.また,鉄摂取量と血中フェリチン値が,男性の心筋梗塞発症に関連すると報告されて以来,酸化ストレス指標である鉄代謝と動脈硬化についての検討が複数行われきた.血中フェリチン値の高い男性患者において頚動脈のプラークの出現率が高いなど,男性における報告が散見される中,女性健常者にも焦点をおき,フェリチンと早期動脈硬化の関連を検討した.
【方法】
対象は心血管疾患,肝疾患,感染症を持たない女性患者225例(16−86歳,中央値63歳)と男性患者266例(24−87歳,中央値61歳)で,CAVIは心臓から足関節までの脈波伝播速度を大動脈PWV原法に基づく方法で求め,パラメータβ法で応用算出することで血圧の影響を低減した.また,IMTは両総頸動脈(common carotid artery:CCA)の最大値を計測し,早期動脈硬化指標(CAVI,IMT)と血清鉄及び血中フェリチン値,並びに喫煙との関連を焦点に統計解析を実施した.
【結果】
性差の検討では,血清鉄及び血中フェリチン値ともに,女性に比べ男性で高い結果であった (血清鉄:男116±1.6,女100±1.8μg/dl,p<.0001,フェリチン:男183±6.6,女75±7.2ng/dl,p<.0001).CAVI,IMTを目的変数とした単変量解析では,男女ともにフェリチンと早期動脈硬化の相関が示唆された一方,血清鉄及び喫煙歴との相関は見出されなかった.血中フェリチン値の上昇は,女性において(1)CAVI右(p<.0001),(2)CAVI左(p<.0001),(3)maxIMT(p=.0013)と強い正相関を示し,男性においては (1)CAVI右(p<.01),(2)CAVI左(p<.01)と正相関したものの女性に比べ弱く,また(3)maxIMT(p=0.53)との相関は見出せなかった.
【考察】
フェリチン上昇が動脈硬化に関与する背景としては,鉄過剰による酸化ストレスの増強が指摘される.これについては,冠動脈疾患患者へのデフェロキサミン投与が血管内皮機能の改善につながることや,動物実験では,ラットへのデキストラン投与が,活性酸素の産生を上昇させ血管内での血栓形成が促進することなど,過剰な鉄が酸化ストレスを惹起することは多岐にわたり実証されている.本検討でも,心血管疾患のない健常者におけるフェリチンの上昇が動脈硬化に関連していることが示唆され,またその傾向はむしろ女性において高いことが判明した.
【結論】
健常者の鉄過剰状態は動脈硬化の促進因子になりうることが,頚動脈超音波検査及び心臓足首血管指数の検討で明らかとなった.