Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:血管Ⅱ

(S457)

頚動脈エコーはCAGでのアプローチ選択の際脳梗塞合併予防に有用である

Puncture portion for CAG should be selected according to atherosclerotic severity of carotid and subclavian arteries to avoid brain attack

石津 宜丸1, 西村 晃一1, 岡崎 由典1, 西川 永洋1, 井上 太2

Takamaru ISHIZU1, Kouichi NISHIMURA1, Yukinori OKAZAKI1, Nagahiro NISHIKAWA1, Futoshi INOUE2

1NTT西日本大阪病院循環器科, 2NTT西日本大阪病院総合生体診断治療センター

1Cardiology, NTT west Osaka hospital, 2biological research center for diagnosis and treatment, NTT west Osaka hospital

キーワード :

【背景】
脳梗塞は心臓カテーテル検査におけるもっとも重大な合併症のひとつであり,発症を予防することは大変重要である.しかし,心臓カテーテル検査時に脳梗塞発症のリスクを考えて,解剖学的な見地から安全な穿刺部位を選択するための方法については今まで十分に考えられていなかった.施設にもよるが一般に,緊急症例や下肢動脈造影も行う場合などの特殊な症例を除くと,検査の簡便性から右橈骨動脈(または上腕動脈)アプローチが選択されることが多い.だが,左右の上腕動脈の構造は異なっており,左側は鎖骨下動脈と総頚動脈が大動脈弓から別々に分岐しているのに対し,右側は腕頭動脈から鎖骨下動脈と総頚動脈が分岐しているため,もし腕頭動脈から鎖骨下動脈・総頚動脈分岐部にプラークがあった場合,カテーテル操作により脳梗塞を発症する危険性が否定できない.そこで,当院では数年前から心臓カテーテル検査に先立って頚動脈エコー検査を行い,プラークの程度を確認してからアプローチ部位を決定することとした.
【方法】
2009年4月から2011年12月までに当院で初回冠動脈造影検査を施行した連続217症例において(ただし緊急症例を除く),冠動脈造影前に頚動脈エコー検査を行った.その際,左右頚動脈の合計プラークスコア(頚動脈IMT:内膜中膜複合体厚の合計)と左右鎖骨下動脈のプラークを計測し,結果によって心臓カテーテル検査時の穿刺部位を以下の3グループに分類した.第一に,左右頚動脈の合計プラークスコアがおおむね10以下であれば,右上腕または橈骨動脈からの穿刺とした(以下グループRと表記).第二に,左右頚動脈の合計プラークスコアが10以上であるが,左の鎖骨下動脈プラークが軽度であれば左上腕または橈骨動脈からの穿刺とした(以下グループLと表記).第三に残りの症例,すなわち左の鎖骨下動脈プラークも高度であるか,透析患者の場合は左右大腿動脈アプローチとした(以下グループFと表記).
【結果】
全217例のうち,グループRは108例,グループLは41例,グループFは68例であった.グループRはグループLや透析患者を除くグループFと比較して合計プラークスコアだけでなく鎖骨下動脈のプラークも有意に低かった(グループR 2.3±1.0 に対し グループL 3.5±1.1, グループF 3.8±1.3 p<0.05).また,合計プラークスコアと鎖骨下動脈プラークの厚さとには正の相関が得られた(r=0.48).また,この217例において冠動脈造影検査における脳梗塞の発症はまったく認められなかった.
【結論】
心臓カテーテル検査施行時には,左右上腕動脈の解剖学的な違いを考慮したうえで,頚動脈エコーを用いて左右頚動脈および鎖骨下動脈の動脈硬化の程度を確認してから穿刺部を決定することが脳梗塞発症予防に有用であると考えられる.