Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:心臓腫瘍

(S456)

房室結節嚢胞性腫瘍(Cystic Tumor of Atrio-ventricular Node; CTAVN)の一例

Cystic tumor in right atrium, a case report of cystic tumor of atrioventricular node

牧 大貴1, 合田 亜希子2, 中坊 亜由美2, 正木 充2, 田中 益水1, 福井 伸哉3, 羽尾 裕之4, 宮本 裕治3, 飯島 尋子1, 増山 理2

Taiki MAKI1, Akiko GOUDA2, Ayumi NAKABOH2, Mitsuru MASAKI2, Masumi TANAKA1, Shinya FUKUI3, Hiroyuki HAO4, Yuji MIYAMOTO3, Hiroko IIJIMA1, Tohru MASUYAMA2

1兵庫医科大学病院超音波センター, 2兵庫医科大学病院内科学循環器内科, 3兵庫医科大学病院心臓血管外科, 4兵庫医科大学病院病院病理学部

1Department of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, 2Department of Internal Medicine, Cardiovascular Division, Hyogo College of Medicine, 3Department of Cardiovascular Surgery, Hyogo College of Medicine, 4Department of Surgical Pathology, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【はじめに】
心臓腫瘍は剖検例では0.1%に認められるまれな疾患であり,75%がLA内に発生するといわれている.良性腫瘍が86%を占め,粘液種が最も高頻度に認められる.主な合併症は塞栓症と腫瘤による血流障害であり,早期の手術が原則とされている.房室結節嚢胞性腫瘍(cystic tumor of AV node: CTAVN)は右房内房室結節に生じる嚢胞性の原発性腫瘍で男女比は1:3と言われている.房室結節に生じるという点で他の嚢胞性腫瘍と区別される.ほとんどが良性腫瘍とされている一方,高度房室ブロックを引き起こし,しばしば二次性に心臓細動,心室頻拍などの致死性不整脈による突然死を引き起こすという報告もされている.多くが死後,剖検にて見つかり,生存中に発見されるケースは稀である.今回,CTAVNの一例を経験したため報告する.
【症例】
57歳,女性.某年8月,検診の胸部レントゲン写真にて異常陰影を認め,近医呼吸器内科を受診.左肺外型肺分画症と診断され手術予定となった.心電図上Ⅰ度房室ブロックを認め,術前の心エコー検査及び造影CTにて右心房内嚢胞性腫瘤を指摘され,当院心臓血管外科へ紹介となった.造影CT上,心房中隔から右心房内に突出するφ37×32mmの腫瘤性病変が認められた.造影効果は乏しく良性腫瘍が疑われた.心エコーでは右心房内に心房中隔に付着する広茎性,40×20mmの嚢胞様エコーを認めた.腫瘤は可動性を認め,内部に明らかな血流シグナルは認めなかった.腫瘤の可動性を認めること,進行すると房室ブロックをきたすことから手術適応と診断し,同年11月14日,腫瘍摘出術を施行した.右心房内に約4cmの表面平滑,白色,内部に液体を認める腫瘤を認めた.嚢胞底部は心房中隔で心房筋を巻き込んでおり,嚢胞底部を摘除すると完全房室ブロックとなる可能性が高いことから,心房中隔の嚢胞底部を残して腫瘍を摘除した.組織診断にて嚢胞壁は明瞭な線毛を有する円柱細胞が重責しており,上皮マーカーが陽性であった.増殖性マーカーは陰性であり,CTAVNと診断された.術後経過は良好で手術10日後に退院し,現在外来にて経過観察中である.過去の報告では再発についての言及はないが,今後房室ブロックなどの不整脈の出現にも注意しながら,心エコーによるfollow upが必要であると考える.