Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:心臓腫瘍

(S454)

左室流出路に発生した粘液腫の一例

A Case of Left Ventricular Outflow Tract Mixoma

佐藤 寛大1, 網崎 正孝1, 渡邊 伸英1, 伊藤 早希1, 菅森 峰1, 高橋 伸幸1, 遠藤 昭博1, 吉冨 裕之1, 織田 禎二2, 田邊 一明1

Hirotomo SATO1, Masataka AMISAKI1, Nobuhide WATANABE1, Saki ITO1, Takashi SUGAMORI1, Nobuyuki TAKAHASHI1, Akihiro ENDO1, Hiroyuki YOSHITOMI1, Teiji ODA2, Kazuaki TANABE1

1島根大学医学部内科学講座第四, 2島根大学医学部循環器・呼吸器外科学講座

1Fourth Department of Internal Medicine, Shimane University, Faculty of Medicine, 2Department of Cardiovascular and Chest Surgery, Shimane University, Faculty of Medicine

キーワード :

【主訴】
労作時呼吸困難
【現病歴】
食道アカラシア術後で近医に通院中であった.聴診時に心雑音を指摘され当科紹介となった.
【既往歴】
食道アカラシアにて手術歴あり
【現症】
身長154cm,体重44kg,BMI 19 BT36.8℃,BP134/78mmHg,HR 72bpm,SpO2 97%(room air),意識は清明であり,麻痺はなし.過剰心音なく第四肋間胸骨左縁にLevine 3度の駆出性収縮期雑音を聴取した.呼吸音は肺胞音でラ音は聴取できなかった.四肢に浮腫なく出血斑,結節は認めなかった.
【家族歴】
なし
【検査所見】
採血結果:CBCはWBC 5740/μl,RBC 4.60万/μl,Hb 13.4g/dl,Ht 38.8%,Plt20.8万/μlと異常なかった.凝固系はPT-INR 0.97,APTT 24.4sec,D dimer 0.3ug/mlであり正常範囲内であった.生化学検査はTP 6.9g/dl,Alb 4.2g/dl,T-Bil 0.9mg/dl,AST 24U/l,ALT 14U/l,LDH 203U/l,Alp 186U/l,CK 101U/l,Amylase 72U/l,T-Chol 200mg/dl,TG 102mg/dl,HDL-C 62mg/dl,LDL-C 125mg/dl,BUN 7.6mg/dl,Crea 0.45mg/dl,eGFR 99ml/min/BSA,UA 3.7mg/dl,Na 136mmol/L,K 4.5mmol/L,Cl 100mmol/L,CRP 0.08mg/dl,FBS 101mg/dl,HbA1c 4.8%と肝腎機能,電解質に異常なく,脂質異常,耐糖能異常もなかった.BNPは104.7pg/mlと軽度上昇していた.IL-6は3.3pg/mlと上昇なかった.胸部X線写真:心胸郭比は55%で肺鬱血は認めなかった.心電図:心拍数69/分の洞調律で正軸であった.心エコー図検査: LVDd/Ds 38/21mm,FS45%,EF(m-Simpson)67%,IVS/PW 12/11mm,AoD/LAD 27/30mmと収縮は良好であった.左室流入血流パターンは弛緩障害型でありE/Ea5と拡張能も良好であった.中等度以上の弁膜症は認めなかったが,三尖弁逆流圧較差は36mmHgと軽度肺高血圧を示唆する所見であった.心室中隔流出路に最大径26mm の腫瘤を認めた.境界は比較的明瞭であるが,拡張期に最も心尖部寄りとなった部分は不整であった.内部は不均一で,低エコーの部分もあるが,血流信号は認めず,広基性であった.腫瘤は収縮期に大動脈弁側,拡張期に左室内腔側に揺れ,収縮期に腫瘤は大動脈弁に嵌頓しないが,左室流出路は狭小化し,最大圧較差16mmHgであった.心臓造影CT:冠動脈に有意狭窄なく,左室流出路に23×10×11mm大の低濃度腫瘤を認めた.腫瘤に造影効果は認めなかった.縦隔にリンパ節腫脹なく,胸水も認めなかった.
【入院後経過】
術前診断は左室粘液種で第11病日に腫瘍摘出術を施行した.経大動脈弁アプローチで左室流出路にゼリー状の腫瘍を確認し,心内膜を離する形で,また一部心筋も薄く削ぐような形で腫瘍を摘出した.病理診断は左室粘液腫であった.術後心エコー図検査では腫瘍は消失しており,左室流出路狭窄も消失した.
【考察】
粘液腫は左房を好発部位とするが,左室孤発例は2.5-4%の頻度と報告され,左室流出狭窄を伴った例はさらに稀である.
【結語】
左室流出路に発生した粘液腫の一例を経験したので報告する.