Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:心・血管腫瘍

(S452)

静脈血栓の卵円孔陥頓を疑わせた乳頭状線維弾性腫の一例

Left atrial papillary fibroelastoma mimicking venous thrombus trapped in the patent foramen ovale

繼 敏光1, 岩永 史郎2, 北村 洋平4, 志賀 洋史1, 鈴木 淳司1, 中村 岩男1, 筒井 達也3, 小林 正武2, 高沢 謙二2, 井上 宗信1

Toshimitsu TSUGU1, Shiro IWANAGA2, Yohei KITAMURA4, Hiroshi SHIGA1, Jyunshi SUZUKI1, Iwao NAKAMURA1, Tatsuya TSUTSUI3, Masatake KOBAYASHI2, Kenji TAKAZAWA2, Soushin INOUE1

1日野市立病院循環器科, 2東京医科大学八王子医療センター循環器内科, 3日野市立病院臨床検査科, 4日野市立病院脳神経外科

1Department of cardiology, Hino Municipal Hospital, 2Department of cardiology, Tokyo Medical University Hachioji Medical center, 3Clinical Laboratory, Hino Municipal Hospital, 4Department of neurosurgery, Hino Municipal Hospital

キーワード :

乳頭状線維弾性腫(papillary fibroelastoma: PFE)は,弁膜に発生することが多い稀な心臓原発腫瘍である.我々は,心房中隔左房面に発生した巨大PFEを経験した.症例は症状のない70歳女性で,高血糖と高血圧のために当院を紹介された.収縮期雑音が聴取され,経胸壁心エコー図検査を施行したところ,心房中隔の左房面に付着する可動性のある紐状の腫瘤(34x8 mm)を認めた.経食道心エコー図検査では卵円孔に嵌頓した静脈血栓などが疑われた.下肢静脈血栓や腹部・骨盤の悪性腫瘍を鑑別するため,CT,MRI,Gaシンチ,消化管内視鏡検査を行ったが,異常を認めなかった.塞栓症予防のために外科的治療が必要と考えて,左房内腫瘤摘出術を施行した.病理所見から乳頭状線維弾性腫と診断された.術後に完全房室ブロックと洞不全症候群を合併したため,永久ペースメーカー植込み術を施行した.現在まで11カ月間,再発を認めていない.原発性心臓腫瘍の発生頻度は剖検例の0.0017-0.28%であり,PFEはその7%と極めて稀な疾患である.その85%は弁膜(大動脈弁:44%,僧帽弁:35%,三尖弁:15%,肺動脈弁:8%)に発生し,左心室(0.01%),心房中隔(0.003%),左心耳(0.003%)から発生するものも報告されている.ほとんどが10 mm以下であり,20 mm以上のものは1%以下と少ない.左心系に発生したPFEでは,心筋梗塞や脳梗塞などの塞栓症を合併する可能性があり,摘出術の適応となる.再発例の報告は少なく,自己弁を温存して腫瘍のみを摘出することが可能である.左房内に可動性を持つ腫瘤性病変を認めた際には,左房粘液腫,卵円孔に陥頓した静脈血栓,感染性心内膜炎や非細菌性血栓性心内膜炎の疣腫を鑑別する必要があり,心エコー図検査が不可欠である.