英文誌(2004-)
一般口演
循環器:血管Ⅰ
(S449)
僧帽弁輪運動速波形と推定中心血圧を用いた左室-動脈連関の臨床的評価
Assessment of Ventricular-Arterial Coupling by Peak Systolic Mitral Annular Motion Velocity and Estimated Central Bood Pressure: A Clinical Study
林 修司1, 山田 博胤1, 2, 發知 淳子2, 坂東 美佳2, 西尾 進1, 山尾 雅美1, 鳥居 裕太1, 平田 有紀奈1, 添木 武2, 佐田 政隆1, 2
Shuji HAYASHI1, Hirotsugu YAMADA1, 2, Junko HOTCHI2, Mika BANDO2, Susumu NISHIO1, Masami YAMAO1, Yuta TORII1, Yukina HIRATA1, Takeshi SOEKI2, Masataka SATA1, 2
1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院循環器内科
1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital
キーワード :
【背景】
拡張期心不全の発症要因の一つとして左室-動脈連関不整合が考えられている.左室-動脈連関は,左室収縮末期エラスタンス(Ees)と実効動脈エラスタンス(Ea)により評価されるが,正確な解析には侵襲的な圧測定を必要とする.一方,動物実験において,僧帽弁輪運動速波形の収縮期波高(s’)がEes/Ea比に関連するという報告がある.我々は,左室-動脈連関の臨床的,非侵襲的な評価に,心エコー・ドプラ法から得られる僧帽弁輪運動速波形とトノメトリ法から推定した中心血圧が利用できると仮定し,その検証を試みた.
【方法】
健常男性ボランティア12例(24±2歳)に対し,心エコー検査とトノメトリ法による中心血圧の計測を同時に行った.心エコー・ドプラ法により一回拍出量の計測,僧帽弁口血流波形および中隔側と側壁側の僧帽弁輪運動速波形を記録した.トノメトリ法では,AtCor社のSphygmoCorを使用して橈骨動脈の脈波解析を行い,中心血圧およびAugmentation Indexを算出した.循環状態を変化に伴う各指標の変化を観察するため,検査中に両下肢に対して90mmHgの下肢陽圧負荷を施行した.
【結果】
結果のまとめを表に示す.下肢陽圧負荷により,末梢の収縮期血圧は有意に変化せず,拡張期血圧が有意に上昇した.また,収縮期および拡張期の推定中心血圧,Augmentation Indexは有意に上昇した.下肢陽圧負荷により一回拍出量は有意に増加し,僧帽弁口血流波形の拡張早期波高と心房収縮期波高は共に増大した.一方,中隔側(Septal)および側壁側(Lateral)のs’はいずれも下肢陽圧負荷により有意に低下した.
【結語】
健常者における下肢陽圧負荷により,一回拍出量の増大と,中心血圧の上昇が観察された.前負荷の増加により左室収縮性(Ees)が亢進し一回拍出量は増大したが,s’は減高した.s’は左室収縮性(Ees)の指標であるものの,今回の研究で後負荷(Ea)のわずかな増大に対して鋭敏に反応して減高したことから,s’はEes/Ea比を反映する指標であると考えられた.心エコー・ドプラ法およびトノメトリ法を用いることで,非侵襲的に左室-動脈連関を評価できる可能性が示された.