Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:血管Ⅰ

(S449)

高齢者高血圧症例におけるWave-Intensityの意義について

Clinical utility of Wave-Intensity in elderly patients with hypertension

野上 佳恵, 瀬尾 由広, 渥美 安紀子, 山本 昌良, 石津 智子, 青沼 和隆

Yoshie NOGAMI, Yoshihiro SEO, Akiko ATSUMI, Masayoshi YAMAMOTO, Tomoko ISHIZU, Kazutaka AONUMA

筑波大学医学医療系臨床医学域循環器内科

Cardiovascular Division, Faculty of Medicine, University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
高血圧は高齢者における左室駆出率保持型心不全の主要な原因であり,心血管連関に基づく心不全病態評価の重要性が報告されている.Wave Intensity (WI) は,頸動脈におけるドプラ超音波法によって算出可能な心血管連関を反映するパラメータである.本研究の目的は,高血圧症例においてWIと心機能および運動耐容能指標との関連を検討し,その臨床的意義を明らかにすることである.
【方法】
対象は19名の高血圧患者(高血圧群;72±7歳,男性9名)とし,22名の健常ボランティア(健常群; 57±13歳,男性8名)をコントロールとした.まず,症候限界性ランプ負荷試験を施行し,運動耐容能指標として最高酸素摂取量(peakVO2)および運動時換気亢進指標VE/VCO2 slopeを測定した.対象者ごとに嫌気性作業閾値(AT)およびpeakVO2から,65‐70%peakVO2となる負荷心エコー図検査の運動強度を決定した.翌週以降に負荷心エコー図検査を施行し,負荷前安静時および負荷終了直後に日立アロカメディカル社製超音波測定機器を用いて頸動脈エコー検査を同時に記録した.WIは,心収縮性を反映する駆出初期の正のピーク(W1)を右頸動脈にて計測した.また,心エコー図による心機能指標は負荷前安静時およびピーク負荷時に計測した.ピーク負荷時と安静時の心拍数(HR)の差をHR reserveとして算出した.
【結果】
健常群と比較し,高血圧群における収縮期血圧(138±25 vs. 122±16 mmHg)およびE/E’(9±2 vs. 7±2)は有意に高く,E/A (0.9±0.3 vs. 1.2±0.3)およびE’(8±2 vs. 11±2 cm/sec)は低値を示した.両群における負荷前安静時HR,EFおよび左房容積(LA volume index)に差異を認めなかった.高血圧群におけるpeakVO2およびATは健常群に比べ有意に低値であり(peakVO2; 18±5 vs. 26±4 mL/kg/min, AT; 12±2 vs. 18±3 mL/kg/min, P<0.01),VE/VCO2 slopeは有意に高値を示した(30±4 vs. 27±2, P<0.01).負荷前安静時W1は高血圧群で有意に高値を示した(11±5*103 vs. 7±3*103 mmHg m s-3).一方,運動後W1は両群ともに有意に上昇し,両群間に有意差は認められなくなった(20±13*103 vs. 24±20*103 mmHg m s-3).安静時W1はpeakVO2(r=0.36, P=0.02),AT(r=0.37, P=0.02),HR reserve (r=0.48, P<0.01)およびVE/VCO2 slope(r=0.44, P<0.01)と有意な相関関係を示した.また,運動負荷ピーク時におけるE/E’とも有意な相関関係を認めた(r=0.50, P<0.01).しかし,負荷後W1とこれらの変数と有意な相関関係を認めなかった.VE/VCO2 slopeおよびpeakVO2を規定する因子として,ステップワイズ回帰分析により求めたところ,負荷前安静時W1は両指標の規定因子として採択された.
【結論】
安静時にwave intensityから求めた心血管連関指標W1は,高齢者の高血圧症例における運動耐容能を規定する因子であることが示唆された.