Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:その他Ⅱ

(S438)

高周波エコー信号の統計解析によるリンパ節の組織性状診断

Tissue Characterization for lymph node by statistical analysis of high frequency echo

藤田 紘資1, MAMOU Jonathan2, 三枝 絵美3, 町 淳二3, 山口 匡4

Kosuke FIJITA1, Jonathan MAMOU2, Emi SAEGUSA3, Junji MACHI3, Tadashi YAMAGUCHI4

1千葉大学工学研究科, 2F.L. Lizzi Center for Biomedical Engineering, Riverside Research, 3Department of Surgery, University of Hawaii and Kuakini Medical Center, 4千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2F.L. Lizzi Center for Biomedical Engineering, Riverside Research, 3Department of Surgery, University of Hawaii and Kuakini Medical Center,, 4Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【目的】
我々はこれまでに,正常肝などの均質な構造を有する生体組織からのエコー信号の振幅確率密度分布はRayleigh分布に近似できるのに対し,肝炎などで肝臓中の散乱体密度が局所的に変化した場合,そのエコー信号が異なる特性を呈し,その分布変化を複数のパラメータで評価することで肝臓中の線維組織の量を推定することが可能であることを示してきた.本研究では,肝臓で用いているエコー解析法をリンパ節に応用し,リンパ節内の微小領域において各々の散乱体密度を推定することでがん転移を判定し,良悪性鑑別を行うことを試みた.
【方法】
摘出した複数のヒト大腸のリンパ節を濃度0.9 %の生理食塩水で満たされた水槽内に固定し,単一振動子(PI130, Olympus NDT, Waltham, MA)および二次元スキャン機構を用いて深度40 mm,方位5.75×4.75 mm(1600×230×190 pixel)の8-bitの三次元エコーデータを取得した.振動子の中心周波数は25.6 MHz,口径は6.1 mm,フォーカス深度は12.2 mmであり,-6 dBの周波数帯域は67 %(16.4〜33.6 MHz)である.各々のリンパ節のエコーデータについて,0.5 mm×0.5 mmのROIに含まれるエコー信号の振幅分布特性の解析を行った.解析は,統計的な分布特性解析法の一つであるQ-Q確率プロットをベースとして我々が考案した手法を使用した.本手法では,Q-Q確率プロットの結果について,正常組織からのエコー信号で構成されるスペックル成分を意味する低振幅分布と,より高散乱体密度な組織からのエコー信号で構成される信号成分を意味する高振幅分布の2つの分布に近似的に分離することで,高散乱体密度の混在率や散乱体密度比を推定するものである(文献1).各リンパ節の解析において,ROIはリンパ節内部を包括するように多数設定した.
【結果と考察】
がん転移のないリンパ節においては,各ROIにおいて推定される密度比の値が大きく,局所的に高散乱体密度な組織が混在した不均質な構造を有しているという結果となった.一方でがん転移のないリンパ節では推定される密度比の値が小さく,かつ,Rayleigh分布に近似される場合や,正常組織内により低散乱体密度な組織が混在すると推定される場合が多数を占めた.これらの結果について三次元の病理組織写真と比較したところ,正常なリンパ節の組織構造を照射音波の分解能レベルで考えると肝炎を生じた肝臓のように複雑かつ不均質な構造を有しているのに対し,がん転移のあるリンパ節では局所的な組織の均質化が生じているという構造変化を反映していると考察された.
【参考文献】
Tadashi Yamaguchi, Hiroyuki Hachiya, Proposal of a parametric imaging method for quantitative diagnosis of liver fibrosis, Journal of Medical Ultrasonics, Vol. 37, No. 4, pp. 155-166, The Japan Society of Ultrasonics in Medicine, Oct. 2010.