Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:超音波ガイド下治療に向けてⅠ

(S436)

超音波2次元アレイを用いた生体条件を模擬した流路中での微小気泡の動体制御

Active control of microbubbles in artificial blood vessel simulated body environment by using a matrix array transducer

江田 廉, 小井土 惇, 伊藤 拓未, 望月 剛, 桝田 晃司

Ren KODA, Jun KOIDO, Takumi ITO, Takashi MOCHIZUKI, Kohji MASUDA

東京農工大学大学院生物システム応用科学府

Graduate School of Bio-Applications and Systems Engineering, Tokyo Univ. of Agriculture and Technology

キーワード :

【はじめに】
これまで我々は,単純な構造の人工血管において音波照射による能動的な気泡の動体制御に関する研究を行ってきた[1,2].生体内の血管構造は分岐を繰り返す複雑な構造をしていることに加えて,血液は水と比べて粘性が高いといった性質がある.しかしながら,先行研究では生体環境を模擬することが困難であるために血管構造や媒質の粘性の影響は未検討であった.また,気泡制御に単板振動子を使用していたため,血管構造の複雑化に伴って使用する音源数が増大してしまう問題があった.今回は音源数削減のための複数焦点の同時形成と,生体応用を目指して流路形状と媒質の粘性による影響を実験とシミュレーションにより検討した.以下に粘性媒質を用いた実験内容を示す.
【実験】
本実験には,気泡の制御性向上のための凝集体形成用の単板振動子と,気泡の経路選択のための2次元アレイトランスデューサの2種類の音源を使用した.人工血管として超音波透過性の高いPVAハイドロゲル材質の多分岐流路,粘性媒質として超音波診断機用のドプラテスト液を用意した.粘性媒質中に懸濁させたF-04Eマイクロバブルを流速50 mm/secで人工血管内に流し,分岐の上流部に凝集用音波と連続する分岐部2カ所に誘導用音波を同時に照射した.誘導用の照射音波は最大音圧約150 kPa-pp,中心周波数1 MHzの連続波とした.その時の微小気泡群の挙動をマイクロスコープを用いて観測し,焦点形成位置の切り替えによる気泡の経路スイッチングを行った.
【結果およびまとめ】
粘性媒質中を流れる微小気泡に連続波を照射した場合の観察結果を図に示す.各分岐部に対し気泡を逸らすように制御する音圧を形成することで,粘性媒質中においても所望の血管に気泡を誘導できることが分かった.また,気泡の誘導効率を比較した結果,媒質が水の場合とほぼ変わらず気泡制御が可能なことを確認した.このことから,媒質の粘性が人の血清や血漿に近い条件での気泡の動体制御が可能なことが示唆された.
【参考文献】
[1]渡會展之ほか:超音波医学,Vol.38, No.4, pp.433-445, 2011
[2]江田廉ほか:生体医工学,Vol.50, No.1, pp.138-148, 2012